本屋は燃えているか

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銀翼のアルチザン 中島飛行機技師長・小山悌物語

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「銀翼のアルチザン 中島飛行機技師長・小山悌物語」長島芳明 著(KADOKAWA) 

SUBARU安全神話の源流となった男の物語。「疾風」をテストした米国空軍は、その性能に驚愕した。中島飛行機という小さな飛行機会社のエースとして、「九七式」「隼」「疾風」などの戦闘機を開発した天才技師・小山悌。終戦間際は「富嶽*1」と呼ばれる極秘計画に取り組んでいた。小山が富嶽に込めた願いとは?

放送局における技術職は新しい技術の開発の話になると目が輝き出します。新しい技術の開発と世の中の動きが良い方向に向かっているうちはいいのですが、両者の動きがもつれ出すと事はややこしい方向に向かいます。最近気になったのは顔認証。テロリストの識別も顔認証の技術で可能なるのだそうです。ここにも放送の基礎研究が使われています。扱い方を一歩誤れば人々のプライバシーを監視する武器になりかねません。しかし、技術者は「それは別な話」と研究の手を緩めません。軍事技術と科学者の倫理が話題となりましたが、技術者もおなじことです。ビジネス書としても読める本ですが、8月の季節、様々な視点から読み込みたい評伝です。 

*1:第二次世界大戦中に日本軍が計画した、アメリカのB-29を超える6発の超大型戦略爆撃機である。名は富士山の別名にちなむ。