「足の下のステキな床」今井晶子、奥川純一、西村依莉 著(グラフィック社)
古い建物が消えていくと同時に、ステキな床もどんどん消えて行きます。
昭和ノスタルジーの最後の記憶になるやもしれぬ、ステキな床の数々をお楽しみください。
ふだん何気なく見下ろす床のデザイン。最近は室内を明るくすることで集客力を上げるため、照明を跳ね返すような白い床が増えています。柄に覆われた床に出会う機会も減ってきた気がします。本書によると1970年代を中心に華やかな柄で床を飾るブームがおきていて、店や施設はアールヌーボー、ジオメトリック、ハニカム、花柄、モザイクタイルなど競うように床を飾っていたのだそうです。消えゆく床のデザインを追い求め3人の著者が日本全国から収集した写真集です。
掲載された床は189点。変わった物さがしが目的ではなく、その場所になじんだステキな床を再発見するというのがこの本の狙いのようです。風雪に耐えて摩耗や汚れはあるものの味のある質感の床が印象的です。
床は建物の中で一番劣化が早い部分です。著者はあえて靴と一緒に写すことで床のデザインであることを示しています。はからずも靴が写り込むことで、生活感と安心感が漂ってくるような気がする写真集になりました。