本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

超凡・平凡社ライブラリーフェア

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冗談かっ!と思いました。

書店がはじめたのが平凡社ライブラリー「超凡フェア」。

書店のノリではなく、版元が自ら持ち込んできた企画です。

平凡社ライブラリーは1993年創刊。

古今東西の名著800余冊を刊行してきた、まじめなシリーズなのですけどね。

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出版社がその気になると面白い企画がたつんですね。

平凡ではなく超凡というキャッチで売り出すこの企画。

シリーズを実際に手に取って見ることができます。 

なぜ「非凡」を選ばなかったかというと、

平凡社新書のフェアで使っているからだとか。

非凡で通しても良かったのではないかと書店員はつぶやいてました。

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気になるのがフェアのシンボル。

アイキャッチの主人公を務めるキャラクターです。

本屋でんすけ「にゃわら版」のキャラクターだそうです。

この"でんすけ”は池袋の立教大学の構内にあるセントポールプラザ書店のスタッフが発行しているフリーペーパーの主人公。 

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その活躍ぶりに目をつけた出版社がフェアの助っ人をお願いしたらしいのです。

平凡社新書はこのたび、平凡社の非凡性を1200%発揮する
平凡社新書非凡フェア】を開催します。
今回のオビは、書店員さんに絶大な人気を誇る
【にゃわら版のでんすけ】!
このオビのお陰で、書店さんからの申込が例年の2倍! 

新書で「非凡」を使ってしまったわけですね。

大がかりな広告を経費をかけて作るより、

身近な題材や才能を使って売り出した方が、

お客さんに喜んで貰えるというのが最近の傾向かもしれません。

でんすけがメジャーな存在に育つかどうか注目です。 

www.st-paulsplaza.com

 

 

 

 

 

「無印良品」この使い方がすごい!

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「「無印良品」この使い方がすごい! 」主婦の友社編(主婦の友社

●買ったはいいけど、うまく使えていない無印良品アイテムがある
●気になるけど、イマイチ使い方がわからない無印良品アイテムがある
●使い勝手はどうなのか、口コミを知りたい無印良品アイテムがある
●引き出し、押し入れ、クローゼットを整理整とんしたい
●造りつけの収納が、使いづらい
●収納量を増やしたい
●収納じょうずになりたい
●家事の時短をめざしている
●家事を好きになりたい
●家じゅうをきれいにしたい
●きれいをキープしたい
……そんな人に役に立つ情報が満載!

無印良品の商品群はシンプルなデザインが多い上、全国の店舗で買えるので、

知恵と工夫さえあればさまざまな用途に流用ができます。

そこの着目したガイドブック。本来の用途に加え、どんな利用方法があるのか、

実際に試した人たちの先行事例集も掲載されています。

見ているだけでも想像力が広がる役立つガイドです。

part1 お宅訪問 あの人の「無印良品」使い
・シンプルで機能的。かつ古いものに調和するデザイン/FU-KO さん
・ものが多くても、小さな家でもスッキリ暮らす/さいとうきいさん
・台所と仕事場を行き来する定番アイテムたち/江口恵子さん
・ラベリングとの相性が抜群なのはやっぱり無印良品/梶ヶ谷陽子さん
・キッチンでも寝室でもやっぱりファイルボックス! /宇高有香さん
・わんぱく盛りの男子が3人いてもイライラしない収納/マルサイさん
・「もしものとき」の備えもやっぱり無印良品/mujikko さん

発売と同時に「無印良品愛好家」の間でも話題になっています。大型サーキュレーターを窓に置いて室内の熱逃がしに使ったという情報は早速利用させて貰いました。

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化粧品や洗面用品の収納道具として利用されている文具「ステンレスペンホルダー」

 

 

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無印良品「スチロール仕切りスタンド3仕切り」に装着して付箋入れてみた。このスタンドは色んな使い方が出来て便利

 

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白磁の歯ブラシスタンドが印鑑やリップフォルダーに

 

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捨て猫に拾われた男

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「捨て猫に拾われた男 猫背の背中に教えられた生き方のヒント」梅田悟司*1  著(日本経済新聞出版社

妻様の一言で訪れた里親会に参加した『僕』。その人生に対する考え方は、元野良の黒猫『大吉』との出会いによって一変してしまった。そう、捨て猫を拾ったはずの僕が、大吉によって救われ、拾われたのだ。
甘えたい時に甘え、構って欲しくない時には容赦なく爪を立てて牙をむく。それにもかかわらず、なお愛される『大吉』の生き様に、相手の顔色ばかりを窺いながら生きる現代人の生き方を考えるヒントがある!

著者は ベストセラー『「言葉にできる」は武器になる。』の梅田悟司さんです。

猫から学んだ脱力系人生論! ?とあるように、単なるペット本ではなさそうです。

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自分の思いをどうやって「言葉」にして「伝える」か。

コピーライターでもある梅田さんが前作で到達したのは

「内なる言葉」に幅と奥行きを持たせることがよく考えることの正体である。

という答えでした。

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 自分の中身を充実することが表現力を高めるための王道です。

では自分の中身を充実させるきっかけはどう作るのか?

梅田さんは、その答えを元野良の黒猫とのふれあいの中で発見したようです。

『「楽しい」よりも「楽しむ」を』

梅田さんは仕事において、楽しい仕事をしたいと思っているが、楽しい仕事というのはおそらく、その仕事を楽しもうとすることで生まれてくるといいます。

ペット本の体裁を借りながら、事例集が語られるところは

自己啓発本と見ることもできます。

 

人生を変えたければ、猫の里親になればいい! ?
元野良の黒猫『大吉』が教えてくれた、等身大の生き方のヒント!とは、

変えることができない猫を鏡にして自分を変えるコトなのかもしれません。

 

 

*1:1979年生まれ。上智大学大学院理工学研究科修了。コピーライター、コンセプター。広告制作でカンヌ広告賞、グッドデザイン賞など受賞多数。著書に「「言葉にできる」は武器になる。」

期待のドラマ、わろてんか本

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朝の連続テレビ小説、秋の新シリーズが始まりました。

最近好調のNHK大阪放送局吉本興業の創業者をいじるドラマとあって、

放送関係者の期待が高まります。

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期待をよせるのは出版関係者も同じです。

半年にわたって放送される連続テレビ小説は息が長い上に、

登場人物や筋立ても複雑で、そこにつけ込んで解説本が売れるのです。

あっという間にムックコーナーを埋め尽くしたのは主人公のモデルとなった

吉本興業創業者の伝記本です。

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テキストのコーナーには当然のように公式ガイドが登場。

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ひよっこ」を押しのけるように平積みされたのはノベライズ本です。

主人公のモデルとなった吉野せいは、子だくさんの家に生まれ、

幼くして奉公に出された苦労人です。駆け落ち結婚した夫は道楽者。

姑からいびられ、借金にも泣かされた人生があると聞かされると

大化けするドラマになりそうな気がします。

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文庫本、単行本コーナーも当然その匂いをかぎつけて、

夫の伝記まで便乗出版されています。

ドラマの主人公は寄席を買い取り、大阪中を笑顔にすべく奮闘した

明るいヒロインとして描かれています。

伝記を読むと、清涼飲料水を売るために、

のどが渇く塩辛いおつまみを併せて売った"浪速のおかん"だったことが

わかります。

ドラマと実物の落差を感じながら読むと、

朝の時間もより盛り上がるような気がします。

 

おい、マジか。池上彰の「ニュースを疑え!」

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「おい、マジか。池上彰の「ニュースを疑え!」」池上彰 著(文藝春秋

池上彰さんの著作史上もっとも“品のない”タイトルの本作。
いったいどんな報道に対して「おい、マジか。」という痛烈な批判がなされたのか? ぜひ確かめてください。

タイトルからわかるように、著者が誰に向けて書いているのか狙いは明白です。

ネットで見つけた情報を何の疑いもなく人に広げてしまう人。

誹謗中傷記事をおもしろがるだけに止まらず、自ら行動に走ってしまう人。

かつては飲み屋の憂さ話で終わっていたはずの内輪話が一人歩きをはじめています。

本来ならば、手に入れた情報の裏をとったり、証拠を集めたりして

安易に信じないことが大切なのですが、

騙されやすい人にかぎって「マスコミがウソを垂れ流している」と、

自己を正当化しがちです。

そこの所をよく知っている編集者は、気がついたのでしょう

「おい、マジか。」

彼らが反応しやすいことばを選んでタイトルにつかったものと見られます。

著者が目をつけた視点は9つ

1フェイクニュース

2権力者

3炎上PR

4危機

5組織

6リーダー

7グローバル資本主義

8科学の常識

9ニュース

何の疑いもなく「ウソのニュース」を伝えたがっている人たちはこの中にいます。

ネット時代の取材学

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「ネット時代の取材学」藤井誠二*1 著(IBCパブリッシング)

 「取材」はマスコミ専門職のための技術ではなく、子どもでも大人でも使える「学びの方法」であり、「人と関わるための技術」である。

目次:人に会って話を聴く/ 「取材」とはなにか?/ 社会の肌触りを体感する/ 自分の身のまわりを掘り下げてみよう/ 自分の「入れ替え可能性」について/ 相手の怒りから逃げてはいけない/ 「あたりまえ」のことをする/ パターン認識で相手との共通項をさがす/ 「出会う」プロセスも大切/ 「場」と「空白」を味方にする/ 相手の「見た目」は情報のかたまりだ/ 「反逆する風景」を無視してはいけない

あたりまえのことですが、取材は当事者に直接会って話を聞く。事実を掘り起こす。という地味な作業の積み重ねです。

人に話を聞きに行くためには事前の予習は必要です。しかし、予習は予断であり、事実に近づくためのきっかけに過ぎません。独りよがりは厳禁です。

自分の目や耳で聞いた事実が予断と異なることがわかったら、あっさり予断を捨てて事実で上書しましょう。自分が得た事実を判断するのは読者であり視聴者です。 

フェイクニュースやヘイト情報がわが物顔でのさばる今だからこそ、座右に置きたい一冊です。

 

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*1:愛知県出身の日本のノンフィクション作家。明治大学非常勤講師、愛知淑徳大学非常勤講師。

人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?

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人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?―――最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質」山本一成 著 (日本評論社

人工知能は今、プログラマの手を離れ、既存の科学の範疇を超え、天才が残した棋譜も必要とせず、さらには人間そのものからも卒業しようとしています。その物語を、できる限りやさしく語りました。

対局の説明はあるものの、将棋の本ではありません。コンピュータ将棋「ポナンザ」の開発者が一般向けに易しく「人工知能」のしくみを説明した本です。AIと人間の得意・不得意。知能・知性とは?という項目が物語るように、人間とは何か考えさせられる構成となっています。