入り口にある平台に新しい本がお目見えしました。
- 「還らざる夏」 原 安治著(幻戯書房)
放送局の新人は、たいてい全国の県庁所在地にある放送局で仕事を学ぶことになります。高度成長期を迎えた日本は農業という産業に存在感があった時代でした。早朝の時間帯は農家向けの番組が放送され、その番組をつくるのが新人の修行にもなっていたのです。
著者はその農業番組の大プロデューサーでした。地域の放送局で骨のある番組をつくったディレクターは、正月になると著者の家で行われる餅つきに招かれて労をねぎらわれ、農村の志を守ることの意味を確かめ合ったという逸話を聞いたことがあります。放送局にも家族的なつながりが残っていた時代があったのです。
日本の近代化を支えたのは教科書に載るような人ではなく、どこにでもいるような農家のお父さんやお母さんたちだったと、駆け出し時代に番組作りをしたとき感じたしたことがあります。ご飯粒一つの重みを感じることができるか否かという小さなことに実は本当の豊かさが隠されているのではないかと思います。
解説には「昭和20年春、満州へと旅立った最後の開拓団と、開拓団を送り出した村。元NHKプロデューサーが、自身の家族と、仕事で出会った「農村と戦争」を、戦後70年の今、書き残す。」とありますが、自分の目で見て自分の耳で聞いたことの重みを記録することの大切さを改めて感じます。
平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」は累積部数1700万部の国民的時代小説シリーズです。平岩さんは「最初で最後の長編小説」といっています。このシリーズもテレビドラマ化されたことで知られています。テレビ局にも番組制作でお世話になった人が多いはずです。
浅田次郎氏の最新短編集。ベストセラーになった「蒼穹の昴」では著者自らドキュメンタリー番組の旅人として舞台となった中国を旅してまわりました。
- (文藝春秋)
祖母・母・孫3代座談会で明かされる年賀状作成秘話、理不尽に耐えた孫の激白、書き下ろしエッセイ、かつて書いた孫の成長記録など、ファン待望の永久保存版です。