気になったのは、あるブログに書かれていたコメントでした。
私の世代はもうあまりファッション誌買わないと思う。SNS駆使してるブロガー世代だから。
ブロガー世代は雑誌を買わない。・・・とは
死刑宣告に等しいひとことです。
雑誌よおまえは死んでいる。
正直それは苦しいなぁと考えながら、その先を読むと一筋の光が見えるではありませんか。
ブログの著者はテレビを見ていました。
NHK総合テレビのドキュメンタリー「プロフェッショナル 仕事の流儀」です。
ファッション誌「ヴェリィ(VERY)」の今尾朝子編集長の特集です。
今尾さんは35歳の時、社内で初の女性しかも最年少で編集長に抜擢されたエリート編集者です。*1
ドキュメンタリーは事象を取捨選択してものごとをわかりやすく伝える特性があるので、少し割り引いて見ます。それでも、編集長の物の考え方や哲学次第で出版物の売れ行きが大きく変わるのがよくわかりました。
「主婦のリアルにこだわることによって作りモノではない説得力を生み出す」
マスコミの生活に埋没すると、制作ルーチンや社内事情にばかり目が向きがちになります。リアルな読者を生で見て物をつくることもだんだん少なくなります。
今尾さんの仕事の進め方は「現場主義」といえます。
登場するモデルも、プロではなく主婦を多く起用しています。
素人を起用するということは、簡単そうに見えますが、プライバシーや肖像権など契約で解決しにくいことがらも多く、実はめんどくさい作業がつきまとうはずです。
しかし、彼女はコストの面ではなく、消費者である読者の立場から主婦にこだわります。
たまたま「主婦」である個人を味方に引きつけることで、彼女たちの持つ価値観や同世代の価値観を紙面に反映させようというわけです。
ゆるくという言葉を使わず、「ゆるやかに働くという人」という着眼に敬服します。
「自分のペースで働けるだろうって」いう言葉には世代に寄り添っていることを実感します。
「あこがれる対象って、やっぱり自分と同じ環境とか状況だったりする人に女性は共感するんじゃないかなと思うので」という編集長の個性が、売り上げという成果になって表れたのではないでしょうか。
最近本屋に行って気付いたのは、シニア向け雑誌の多いこと。
雑誌というか、書籍かな?
60-89歳、パリの素敵なマダムの装い
とかそんな感じの書籍が本屋の一番目立つところにたくさん置いてある。
これからはシニア向けや、上の世代のファッション誌が充実していくのかな。
放送局も書店も、リアルな読者に対する自覚的な想像力を持ち続けることが大切なのでしょう。
*1:「ヴェリィ」は光文社が発行する30代女性向けファッション誌で、今尾氏は2007年に編集長に就任。出版不況と呼ばれるなかで付録を付けずに売り上げを伸ばし、部数は32万部を記録している。