文芸書の一角にテレビドラマや映画などの原作本
を並べたコーナーがあります。
オビを見ればひとめで「ドラマの原作」とわかる本もあれば、何も触れていない本もあります。
数ある本の中から原作を探して売り場に並べるのも書店員の仕事です。
書店では漫画や小説を原作にしたドラマを“原作もの”として扱います。
原作小説とは異なる演出やストーリー展開などに一喜一憂するのも原作つきドラマの面白さです。
1月スタートのドラマの中から原作のありなしを探してみました*1。
- 「わたしを離さないで」TBS系 初回視聴率6.2%
原作:カズオ・イシグロ著(早川書房)
残酷な運命に翻弄された若者を描く「ブッカー賞」に輝いた話題作。
- 「お父さんと呼ばせて」フジ系 9.6%
ドラマオリジナル。脚本:林宏司。木村拓哉のアイムホーム、医龍など。
- 「ちかえもん」NHK 5.3%
ドラマオリジナル。脚本:藤本有紀。朝のテレビ小説「ちりとてちん」。
- 「家族のカタチ」TBS系 9.3%
原作は非公開。
- 「フラジャイル」フジ系 9.6%
「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」原作:草水敏 漫画:恵三朗
月刊アフタヌーンに連載
- 「ナオミとカナコ」フジ系 7.9%
- 「ヒガンバナ〜女たちの犯罪ファイル」日テレ系 11.2%
ドラマオリジナル。
- 「怪盗 山猫」日テレ系 14.3%
原作:神永学の小説シリーズ『怪盗探偵 山猫』(かいとうたんてい やまねこ)(角川書店)*2
原作本探しに欠かせない情報は取次のサイトに探しに行きます。
サイトを見てわかるように取次側も原作本が売れることはよく知っています。ですから一番目立つところに検索バナーを貼っています。
映像化作品特集というページに飛ぶと、
原作、放送日、放送局と内容が一覧となって表示されているので、それを見ながら選書を行うのだそうです。
しかし、出版社によってはドラマ化されることを意識していないのか、情報が出てこないものもあります(売る気がないのか、広告に手間暇かける余裕がないのか、それとも気がついていないのかどちらなのでしょう)。
原作本のコーナーで「ドラマ化」されたことが表記されていない本を見かけたら、それは書店員が探し出して並べたものです。
さて、原作を元にしたドラマは読者にとっては親しみやすい反面、制作者にとっては内心忸怩たるものがあるようで、
「本音を言えば、原作のないドラマを作りたい。でも、オリジナルでストーリーを書いても企画が通らない」
「企画の面白さが理解してもらえない。既に絵や映像がある漫画やアニメを見せると簡単に企画が通ることもある」
などという声を聞きます。
今期のように原作とオリジナルの割合がほどほどで、極端に偏らないケースはけっこう希です。オリジナルの発見や、原作のおもしろさを味わえるほどよき案配といったところでしょうか。