本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

チロルくんのりんごの木

これまでに描いた絵本は100冊以上。児童文学界のノーベル賞といわれる「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を日本人で初めて受賞した、日本を代表する絵本作家が荒井良二さんです。9月10日に上梓された最新刊がこの本。

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「チロルくんのりんごの木」荒川良二*1 著(NHK出版)

高い山々に囲まれたとある村。ここでは、家族が増えるたびにりんごの木を植え、「家族の木」としてともに暮らしています。
この村に暮らす男の子・チロルくんにとって、ここは世界でいちばん好きなところ。村での生活も、自然の景色も、家族や動物たちも、幼なじみの女の子・エーデルちゃんのことも、みんな大好き。
花が咲いて、雪が降りつもり、牛を育て、宿題をして、収穫や家族の成長を歌をうたってお祝いする。そんな毎日がなによりもほこらしい。大きな、大きな世界の中で、ここがいちばん輝いているのです。
そこにはいつもりんごの木があって、見守っている。チロルくんの恋の思い出や未来の家族との生活を。これまでも、これからも、りんごの木がそばにいます。
チロルくんのいちばん好きなところ。りんごの木があるところ。家族の木があるところ。

NHKアニメ『チロルくんのりんごの木』(2016年3月放送)の原作絵本。

荒井さんの絵本は不思議で楽しい絵本です。クレヨンを持った子どもがグリグリと画用紙に向かって、夢中になって描いたような絵が印象的です。純粋無垢としかいいようのない言葉も添えられ、独特なリズムとユーモアに思わず引き込まれてしまいそうです。

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荒川さんは、筆を選びません。折れた色鉛筆の先を使ったり、描く時もさまざまな姿勢や恰好で用紙に向かったりと、天衣無縫といってもいい自由な制作スタイルです。

「プロの絵描きとは絵を描くためのコツ、いわばうまく描くための近道を知っている人たちだと思われているかもしれませんが、とんでもない」

「プロとはそういうのとは反対側にいる生き物ではないかとさえ思っています」 

刊行を記念して、10月10日(月)14時から東京・青山ブックセンターで、荒川良二さんのトークイベントが開催されます。 

www.aoyamabc.jp

blog.ryoji-arai.com

山形ビエンナーレでも関連イベントが多数。

biennale.tuad.ac.jp

そして、10月22日(土)午後6時30分からはNHKBSプレミアムで

里山を美しい映像と絵本とアニメで紀行した「荒川良二の絵本じゃあにい チロルの里山ものがたり」も放送予定。

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BSプレミアム|BSガイド|NHK BSオンライン

荒川ワールドをお楽しみください。

荒川良二さんの世界を掘り下げた本もあります。 

ぼくの絵本じゃあにぃ (NHK出版新書 429)

ぼくの絵本じゃあにぃ (NHK出版新書 429)

 

子どもが描いたような絵に、起承転結のないストーリー。こうしたプロフィールや、奔放な作風をみると、誰しもが荒井良二さんのことを「天才的なアーティスト」だと思うことでしょう。 (書籍案内より)

 

*1:1956年山形県出身。『ルフランルフラン』で日本絵本賞、『たいようオルガン』でJBBY賞、『あさになったのでまどをあけますよ』で産経児童出版文化賞・大賞を受賞するほか、ボローニャ国際児童図書展特別賞、小学館児童出版文化賞講談社出版文化賞絵本賞など受賞多数。2005年には日本人として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞