映像関連書籍コーナーをいつのまにか侵略していた特撮本
「ウルトラQ」は1966年にテレビ放映が開始された円谷プロの空想特撮シリーズです。ドラマに登場するのは怪獣が中心で、ウルトラマンシリーズのような善玉ヒーローは登場しません。全28話。
・誕生50周年! 名作誕生の軌跡を追う、初の本格的ドキュメンタリー
・綿密な取材と緻密な考察で定説を覆す画期的な一冊! 「WOO」はなぜ実現しなかったのか?
映画界とテレビ界の当時の状況は? なぜ「怪獣路線」に変わったのか?
企画室長・金城哲夫の苦闘と成果とは?「特撮」に留まらぬ視点から圧倒的筆力で描く決定版!!
……ちょうど50年前、1966年1月2日、第1話「ゴメスを倒せ! 」の放送から始まった『ウルトラQ』は、
テレビ史を変える画期的なシリーズだった。だが、名作誕生までの道のりは決して平坦でなかった。
スタッフは前代未聞の番組を作るため、文字通り暗中模索であった。
そして、番組成立の背景には、テレビの隆盛と映画の衰退という二つの歴史的潮流があった…。
テレビ草創期を活写した2冊(『円谷一 ウルトラQと“テレビ映画"の時代』『飯島敏宏 「ウルトラマン」から「金曜日の妻たちへ」』)の著者が、
「特撮」に留まらぬ広い視点から描く画期的ドキュメンタリー。かつてない徹底取材で歴史的事実に限界まで迫る。
秋田県で見た「ウルトラQ」にはまり込んだ著者が論評した「ウルトラマン」以前の特撮世界。中高年には郷愁を、若手愛好家には歴史探訪のロマンをかき立てるガイド本です。
「Q」が描いた戦後社会を独自に解読!日常に入り込んだアンバランスな世界が意味するものとは?なぜ日本に怪獣たちはやって来たのか?人はなぜ見慣れぬ怪獣に変貌したのか?戦後社会を破壊するものの正体とは?テーマ毎に分類して全28話のヒミツをあぶり出す。
半世紀ほど時間を経過した作品の研究や批評は、関係者が存命していることなどから辛口の書評が多く見られます。 様々な視点や論評が積み重なることで、作品が背負う価値が定まってきます。
ガソリンから電気まですべてのエネルギーを吸い込む風船怪獣バルンガの出現により、普段は果てしない騒音に包まれる東京ですべての経済活動が停止した。兵器で怪獣と戦う人間だけではなく、「こんな静かな朝はなかった」とバルンガを肯定する登場人物もいる。その他の話でも、人口が増えすぎた過密都市の解消に人間を8分の1サイズにする計画、家族から疎まれ、上司からも叱責(しっせき)された会社員が現実逃避で乗り込もうとする異次元列車……、著者は「何かのきっかけで、当たり前と思える常識世界がバランスを失い」「急ごしらえの戦後社会の矛盾が飛び出してくる」と指摘。「それこそが『ウルトラQ』が描こうとした現実であった」という。
また、こうした世界を描いた背景として、「築き上げて維持しているはずの社会のシステムが足下から崩れる」不安を66年当時の日本が抱えていたとする。この不安感は今も底流にあるのではないか。DVDは白黒画面だったが、内容は古びていない。脚光を浴びる「ゴジラ」の新作に対し、50年前のSFドラマも示唆に富み、負けていない。
偶然の一致かもしれませんが、同一テーマに関する本が相次いで出版されること自体に意味があるように思います。