2016私の三冊
佐々木幹郎*1さんが選んだ今年の三冊。
1「まだ空はじゅうぶん明るいのに」伊藤悠子 著(思潮社)
「問いを抱えながら/カーテンを開けると/枝のあいだに/星がひとつまたたいて目が合った」(「返信」)。
すぐに言葉にならない思いと時間をくぐりぬけて辿り着いたこの場所―
前詩集から5年ぶりの新詩集。
エッセイ集『風もかなひぬ』同時刊行。
装画=伊藤武夫、装幀=稲川方人
2「ベルリン詩篇」冨岡悦子 著(早川書房)
バベル ベルリン
はじめに 命令形が立った
命ずる者には 従う者がいて/叛く者があった
(「バベル ベルリン」)
「難問を手放さずに生き延びることは、とても難しい。それでもなお、言葉とともに向き合って生き延びたい」(「覚書」)。
ルー・リードのアルバム、カフカの巣穴、躓きの石、さまたげる壁……。
街の気配とともに見つめられた現代史の真意。
パウル・ツェラン研究でも知られる詩人の、27の詩篇。
装幀=稲川方人
3「空閑風景」齋藤恵美子 著(思潮社)
「部屋と世界が、触れあえぬまま重なるときの、余剰部分/そこで、外皮から朽ちるとして/最後に、わたくしに、何がひかるか」 (「孤影」)。 言葉のまなざしに現れる、もっとも遠い一点まで。 空洞を鳴らす黙音のふるえ、詩23篇。 カバー写真=ひさの
*1:詩人。1947年大阪出身