「悪とはなにか」テリー・イーグルトン*1 著(ビジネス社)
なぜ人間に“悪魔”は宿るのか。なぜ「悪」が栄えるのか?なぜ「悪の闇」が「善の光」よりも強いのか?ヒトラーの犯罪はスターリンと毛沢東のそれよりもひどいとは必ずしもいえない!?人間の残虐行為の「なぜ?」を論証する。
<本書の内容>
第1章 悪魔と小説
第2章 猥褻なる快楽
第3章 ヨブの慰安者人間が織りなすさまざまな「悪」について、著者はフロイトの「生の欲動」と「死の欲動」の葛藤仮説をはじめ、文学、心理、経済、歴史など、多彩なジャンルを越境して分析を行います。そして、悪は人類が誕生以来抱え続けてきた「文明論的病い」であると結論付け、だからこそ「悪」の所業について、理解不能の悪魔の仕業であるとのレッテルを張って社会的かつ物理的に排除する動きを「対症療法」にすぎないとしました。むしろ、「悪」に対して一方的拒否や判断停止をするのではなく、あくまで理性的なアプローチを執拗に続けなければならないとします。
イーグルトンは筒井康隆氏のベストセラー『文学部唯野教授』の下敷きになったとされる『文学とは何か』をはじめ多数の著書を執筆し、うち30冊近くが翻訳出版されているイギリスの哲学者です。 テロや大量殺戮、無差別殺人、外国人排斥や人種差別など世界が縮こまりつつある中で、抑圧された負のエネルギーが暴発する危険性が高まっているように思います。放送に携わる人に求められるのは、懐疑心であり見識です。