新しくコミックコーナーができるというので、選書の意見を求められました。「聞いたからと言って棚に並べられるとは限らない」というのですから、責任はさほどありません。当然品数が限られているこの書店では調べきれないので、帰り際に「まんだらけ」と「ツタヤ」をはしごして見つけたのがこの2冊です。
あてどない生き様。寄る辺ない生き物。それでも「彼ら」はそこに居る。生き続けてゆく───。panpanya待望の最新刊。日記はもちろんカラーページもたっぷり収録。あなたの目に映るままの森羅万象をご堪能ください。
動物たち [ panpanya ]
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注目の新人作家が「楽園」コミックスに初登場。「楽園」本誌&web増刊で発表した作品に同人誌発表作や日記など含めたっぷりとpanpanyaワールドをご堪能下さい。 2014年4月刊。
「動物たち」は1月の「このマンガがすごい」オンナ編ランキングに顔を出していて、気になっていた作品です。著者はpanpanya。「ぱんぱんや」とでもいうのでしょうか?装丁からして「みすず書房」です。マンガ本らしくない雰囲気が漂っています。
青春時代を青林堂「ガロ」に捧げた過去もあることから、つげ義春の作風を連想し、興味を持ってしまいました。「いずれが幻なのか この世か、あの世か。」と書かれた帯がくすぐります。
シュリンクを破った瞬間に現れたのが、どこか懐かしいような夢うつつの世界です。 (あ、決してホラー作品ではありません。しいていうなら今風滝田ゆうのような不思議な世界観です)
「蟹にさそわれて」に収録された短編「方彷の呆」。「駅前商店街駅」に降りた主人公の少女がたどる世界は昼間なのに最終電車が出てしまった街です。迷子になった主人公から相談を受けた街の住人は、主人公は幽霊だと指摘します。見慣れた街が迷宮のように絵かがれるこの作品は見ているだけで飽きません。どうやら作者は東急田園都市線の沿線に関わりがある人らしいのですが、正体は不明。同人誌を振り出しに商業作品の4冊目を出したところまでしかわかりません。
「動物たち」に収録された挿絵。銅版画のような細密な風景と鉛筆のようなタッチで輪郭だけ描かれた人物の落差が印象的です。「4冊のうち3冊は注文ができますが、初期の作品「足摺水族館」は配本ルートに乗っていないので、直接版元に注文してください」と書店員の説明。選書案はこの時点で落選してしましたが、コアな客筋はつかむだろうから注目していこうという点で意見は一致しました。
追補2017.04.25
週刊文春の書評欄「文春図書館」2017.04.27で、歌人の穂村弘さんが「動物たち」に言及しています。「過剰なリアリズムとでもいうべきスタイルだ」とは的を得た評価。「生々しく感じるのはフィルタリングを司る機能が覚醒時にくらべて緩んでいるのが夢を見ているときなのだろう」