「夕凪の街 桜の国」こうの史代 著(双葉社)
呉市を舞台にしたアニメーション「この世界の片隅に」はその精密な取材と丁寧な造りが多くの人々の心を揺り動かしました。
折しも被災地にはハチロクと呼ばれる祈りの日がまもなく訪れます。
地域の放送局では毎年この日のために様々な企画を放送してきました。
なんという巡り合わせでしょうかドラマの原作となったのがこの本です。
映画を見た後コミックの原作本を手にした人も多いはずです。
平凡な主婦の日常に寄り添った作品の背景には、ヒロシマを描いたもう一つの作品があったことに気付いたのではないでしょうか。
「この世界」に登場した人物には戦後の復興に向かう温かい未来が感じられました。
いっぽう「夕凪の街」は二部作で、平凡に生きたいというささやかな思いを奪われた人の物語。
ものすごく重いテーマが描かれています。
一つにテーマを違う切り口で描き分けた作家の強い気持ちが伝わってきます。