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#藤井誠一郎「ごみ収集という仕事: 清掃車に乗って考えた地方自治」

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「ごみ収集という仕事: 清掃車に乗って考えた地方自治」藤井 誠一郎 著(コモンズ)

一昔前ごみ収集という仕事の取材は人権問題が絡むデリケートな分野でした。だから取材にあたっては念には念を入れ気を配ったものです。

しかし、その仕事は委託化が進み数ある仕事の中の一つし標準化が進んでいます。それはそれで喜ぶべきことのように見えますが、ある種の危惧もまた抱えているのだそうです。

著者は地方自治を専門とする研究者。「現場主義を貫く」というスタンスから、著者は新宿区内で9カ月にわたってごみ収集を体験し、その結果に基づき、ごみをめぐる地方自治の課題をまとめた本です。

ごみ収集にかかわる作業員が、実は誰よりも街の道路事情や住環境をめぐるわずかな変化まで知り尽くしていること。それが街の防犯や防災におおいに貢献しうる潜在的な公共の財産になっているかなどには、深く納得した。(中略)現在の社会は依然、大量生産、大量消費、大量廃棄から成り立っている。最後の廃棄の問題に真剣に向き合うことなく、私たちの暮らしに未来はない。本書を読了後、きっとあなたは街をゆくごみ収集車を見る目が変わるだろう。

勝見明朝日新聞2018.7.21)

危機管理の専門家は、昨日まであったものが今日はないといった日常の些細な変化に注目するといいます。いつもは物が置かれていない道端にものが置かれていたり、逆にそれまであったものがなくなっていたりという"風景の差分"に危機の種が潜んでいるというのです。

ごみ収集にかかわる作業員の観察眼は、重要な社会資産であるという指摘には頷かされます。