本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

書店は棚作りで勝負する

昨日並んでいたはずの本が見当たらないので書店員にたずねると別の棚に案内されました。よく見ると微妙に配置が変わっています。「棚のチェックは頻繁にしてます。本屋は決して暇ではないのです」と配列の解説を受けることになりました。

 

売り場が大きくない書店では、すべての本を平等に置くわけにはいきません。一番目立つ一等地の平台に表紙を目立つように積み上げたり。平台に置けない本はできるだけお客の目にとまるように工夫します。「棚作り」と呼ばれる作業が重要になるのだそうです。

棚に背表紙を見える形で立てて並べることを「棚差し(背差し陳列)」といいます。客から見える部分は背表紙だけ、棚に詰め込むように大量の本を並べるオーソドックスな方法です。しかし何も考えずに並べただけは売れる本も売れません。作者ごとに並べたり、大きさや色味をそろえたりして、本の存在感を最大に引き出すのも書店員の腕次第というわけです。

「修業時代に、先輩から時間があれば本を触れといわれたものです」というのはベテランの書店員。本を触れというのは「入れ替える」ことを指します。現在はPOSと呼ばれる売り上げ管理方法がありますが、頻繁に本を入れ替えることの方が、売り上げ情報だけでは見えてこない「読者の気持ち」がつかめるのだそうです。

背差しで並ぶ数冊分のスペースをつぶして、表紙を見せるように並べる「面陳」という並べ方があります。書籍の顔である表紙をモザイクのように、書架に組み立てるのは書店員にとって「この本をおすすめします」という遊び心のサインだとらえると楽しくなります。