日本のメディア芸術の最高峰に行ってきました。
六本木にある国立新美術館で開催中の文化庁メディア芸術祭。
アートやアニメなど4部門のメディア芸術の優秀作品が展示されています。
会場は若い人でいっぱいです。
書店愛好家として気になるのがマンガ部門です。
今年度の大賞は「かくかくしかじか」東村アキコ 著に決まり、彼女の生原稿が展示されていると聞いたからです。
受賞作は、ダメ美大生の主人公が恩師の期待を裏切りながらも絵描き(漫画家)をめざす物語。
壁面にはあの恩師の姿もありました。
「描け」という短く鋭いメッセージは、作中に登場する主人公だけでなく、
ものを作るクリエィター全員に向けられたメディア芸術祭のコンセプトそのものです。
お目当ての生原稿には、主人公がいつものようにテンパッている場面。
ホワイト修正や鉛筆書きのネームに作者の集中力を感じます。
制作者が世間にあまり公開したくない、作品の土台となる設計図に目を見張りました。
漫画では「ネーム」と呼ばれるシナリオと画面構成のラフスケッチです。
ネームは大学ノートに書かれていました。
これは意外な発見です。
放送では完成品を「完プロ」といいます。完プロ以前のものはすべて素材であり人目にさらすものではありません。
作業用のメモでさえ、公開するのにはかなり勇気がいるものです。
作り手の物の見方や手法など見る人が見たらわかってしまいます。
筆跡からはとどまることなくあふれ出てくる構想を、
画面に定着させる作者の執念が見えてくるようです。
その道を志す若い人たちにはしっかり目に焼き付けて欲しいと思いました。
「プロの漫画家にならなくてよかった」と糸井重里さんがサイトに書いていましたが、まさにその通り。
まちがってプロの絵描きをめざさなくてよかったと思いました。
壁の余白に作者直書きと思われるサインもありました。
制作過程を身近に体感することは、作品と作者の世界観をより深く鑑賞する手段です。興味のある方は会場に足を運ばれることをオススメします。
大賞
「かくかくしかじか」東村 アキコ
優秀賞
「淡路百景」志村 貴子
「弟の夫」田亀 源五郎
「機械仕掛けの愛」業田 良家
「Non-wprking City」HO Tingfung
新人賞
「エソラゴト」ネルノダイスキ
「たましいいっぱい」おくやま ゆか
「町田くんの世界」安藤 ゆき