本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

五十嵐太郎さんが選んだ今年の三冊

2016私の三冊

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五十嵐太郎*1さんが選んだ今年の三冊。

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1「ゲンロン4 現代日本の批評III」東浩紀 編(ゲンロン)

 昭和から平成の言論史を徹底総括、批評を未来に開く
「現代日本の批評」ついに完結! 

ゲンロン4 現代日本の批評III

ゲンロン4 現代日本の批評III

 

東浩紀は日本の特殊な状況を確認しつつ、批評の観客を取り戻すことや活動の継続性を通じて未来へとつなごうとする。

2「建築の前夜――前川國男論」松隈洋 著(みすず書房

ル・コルビュジエのもとで学び、帰国後レーモンド事務所を経て独立した建築家・前川國男(1905-1986)の前半生、敗戦までの軌跡。「日本趣味を基調」という募集規定にあえて逆らった案により一躍モダニズム運動の旗手として脚光を浴びた東京帝室博物館(現・東京国立博物館)コンペ、代々木か明治神宮外苑か駒沢か――IOC総会で開催決定後も主競技場の敷地が二転三転するなか岸田日出刀のもとで練りあげた
幻の「第12回オリンピック東京大会」会場計画、当初の前川案から紆余曲折を経て坂倉準三の手に委ねられ、建築部門グランプリを受賞したパリ万博日本館、前川が審査員に加わり丹下健三が一等当選を果たした日米開戦後の大東亜建設記念営造計画、そして戦時下最後のコンペとなった在盤谷日本文化会館ほか日本近代建築史上重要な設計競技やプロジェクトの実相を水面下の動きとともに浮かびあがらせ、戦時下の体制への建築家の関与や抵抗をも検証した決定版資料である。
収録図版約200点。

建築の前夜――前川國男論

建築の前夜――前川國男論

 

建築史家の松隈はル・コルビジェ国立西洋美術館世界遺産に登録された今年、それを祝福するかのようにみすず書房六輝社から2冊ずつ刊行した。とくに前川國男論は頭が下がるほどの労作。 

3「反覆 新興芸術の位相」彦坂尚嘉 著(アルファベータブックス)

60年代末期における芸術の風化現象に対する“美共闘”の闘争を背景とした、彦坂尚嘉の“表現の組織化”の実践と精神活動をまとめた日本現代美術史上に残る重要作、遂に復刊!“もの派”の中心作家である李禹煥に反論し話題を呼んだ「李禹煥批判/内的危機としてのファシズム」も収録。

反覆 新興芸術の位相

反覆 新興芸術の位相

 

彦坂は美術家であると同時に、歴史意識に基づく批評をネット時代にも粘り強く持続する。1974年の著作の復刻版。  

*1:建築史家、建築評論家。工学博士。東北大学大学院教授