本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

シャープの中からの風景 シャープ社員がブログに綴った3年間

ああまた出たかという内部告発本。蟻の目で見た企業の現実。著者の素性が明らかではないことから、読み手の読解記述力(リテラシー)が問われる本です。書かれていることを全部事実とは思わないで「方向性はこうなんだろうな」と思いながら読みたい本です。

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「シャープの中からの風景 シャープ社員がブログに綴った3年間」元シャープ社員A 著(宝島社)

あのシャープの経営危機の中で大きな注目を集め、鴻海の出資後に幕を閉じた、ブログ『シャープの中からの風景』("ライブドアブログ OF THE YEAR 2016"話題賞)の書籍化!

2013年1月、空席が目立つようになった職場の風景にかき立てられるように、ひとりの社員がブログをひっそりと書き始めた――。シャープという巨船が沈みかけたとき、社員はいったい何を思ったのか? 大きく揺れるシャープの内側から見たこと、考えたことを当事者がリアルに綴った、すべての会社員にとって他人事ではない話題作。

「シャープの退職者」を名乗る人物が投稿したブログ『シャープの中からの風景』 はすでに閉鎖されていました。

http://blog.livedoor.jp/zidi/

このブログは、現役社員が社内からの視点で運営しているといわれていました。社内の情報が書き込まれることが多く、社内情報の漏洩や幹部批判がシャープ社員の間でも高い関心を集めていたようです。

自社内で事件が発生しても、職場の間に伝達され共有されることはほとんど期待できないことを組織の中にいる人は誰もが知っています。週刊誌などで報道されて初めて知ることが常識だからです。しかしこうした状態は本書のような形で世間に露出され共有されていくことになるのでしょう。管理部門は小手先の箝口令をひいたり、文書管理を徹底したりという対応を行うものとおもわれますが、それはおそらく大きな意味で筋違いの対応です。

ガバナンスの強化という言葉が昨今はやりとなっています。人の口をふさぐことではなく、課題となった原因を根元から絶つことが肝心なのですが、どの企業でも問題を抱えていることがわかります。

編集で読みやすい構成にまとめていて、現実はもっとゆるく動いているものと思われますが、「(おそらく)事実は小説よりも奇なり」「隣の芝生は青い」ことわざを実感する内容です。