ちょっとやるせない気分になったとき、こんな猫の声を聞いたら救われるかもしれません。 息長く売れて欲しい本の一つ。
悩んでいる人を探して夜の街をパトロールする猫・遠藤平蔵を描く「夜廻り猫」。遠藤は誰かの“涙の匂い”を察知するとその人のもとを訪れるが、あくまで寄り添って話を聞くだけで、解決はしない。だけど読むと不思議と癒される。
誰かに聞いた話ですが、野良猫の寿命は平均3年なのだそうです。生まれてまもなく死んでしまう子猫の数が平均寿命の足を引っ張っているようですが、それでも野良猫は厳しい環境の中を生き延びていると思うとちょっと切ない気分になります。
そんな野良猫に心配される人間たち。立場が逆転した関係に、現代社会に巣くう心の闇の奥深さを感じます。主人公の平蔵はどてらを着ています。頭には鮭の缶詰をのせてます。懐に抱いているのは行き倒れ寸前のところを平蔵に巣くわれた片眼の子猫。配置された小道具の存在が印象的です。
冒頭のカラー口絵に星降る夜が描かれていて、イギリス海岸の文字が浮かんでいます。それだけで宮沢賢治の存在が強く浮かび上がってくるのがなんとも不思議です。賢治は猫が好きだったのかな。
「心が温められたらいいのに」とは・・・心震えるような台詞ですね。