本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

すごいトシヨリBOOK トシをとると楽しみがふえる

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敬老月間を前にして、シニア世代の本が続々登場しています。売れ筋筆頭がドイツ文学者・エッセイストの池内紀さんの本です。

本が売れない要因の一つに若い世代の活字離れ。というか・・印刷媒体離れがあることは最近の統計でも明らかになりました。当店でも影響は雑誌類の売れ行きに顕著に見られます。女性向けファッション誌が辛い。書店にとってかすかな望みがシニア層だと思います。「ヤケクソが籠っています」と作家の佐藤愛子さんが書かれたエッセイ「九十歳。何がめでたい」が売れたのも、共感するシニア層がいたからこそ。出版各社がシニア層を狙うのには意味があるのです。

 

「すごいトシヨリBOOK トシをとると楽しみがふえる」池内紀 著(PHP研究所

ドイツ文学者・池内紀の語り下ろし。老いに抵抗するのではなく、老いを受け入れて、自分らしく楽しくトシをとろう。そう決めた著者は、70歳になったとき、「すごいトシヨリBOOK」と銘打ったノートに、老いていく自分の観察記録をつけはじめた。もの忘れがふえたり、身体が不調になってきたり、そんな自分と向き合いながら著者は、老人の行動をチェックするための「老化早見表」なるものを考案したり、「OTKJ」(お金をつかわないで暮らす術)といった独創的な節約システムを生み出すなど、楽しく老いる知恵と工夫を日々研鑽している。「心はフケていないと思うこと自体がフケている印」「心がフケたからこそ、若い時とは違う命の局面がみえてくる」。名エッセイストによる、ほがらかに老いを楽しむノウハウがつまった画期的な本

65歳以上の高齢層がこれからの消費を引っ張っていくのだそうです。高齢者向けの商品というと、わずかな年金と介護や健康といった固定観念を持ちがちです。ところがどの世代よりシニアの購買意欲は高いと言い切る本が頭に浮かびました。

この本の著者によると、特に70代の女性の消費意欲が顕著なのだそうです。子育てを終え健康を保った女性たちはこれまでのシニアとは違ったイメージを持っています。自己研鑽に向ける気力も十分。加えて社会的なストレスも全世代でいちばん低いことから消費にもおおらかで、年寄りだとあなどれないパワーがあるのだそうです。

説得力ある統計データを眺めがら、池内さんのエッセイを読むと高齢者の暮らしは貧困の一言でくくりきれない多様性があることがわかります。