「貧しい人を助ける理由 遠くのあの子とあなたのつながり」デビッド・ヒューム著(日本評論社)
原書は、英国のガーディアン紙(The Guardian)に掲載されたエッセイを加筆修正したものです その翻訳本である本書では、専門用語や、日本では馴染みがない表現には訳注を入れることでスムーズに内容を理解することができるようにするなど、 読みやすくなるように更なる工夫をしています。 「援助というのは、一部の『金持ち』の仕事だ」と考える人々に、「あなたも『金持ち国』の人間だ」ということを気付かせ、 自分の問題として考えてほしいという監訳者の意図が込められています。
日本の日常からは想像がつかない環境で暮らしている人たち。
そんな人たちは世界にたくさんいます。
ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに仕事で行ったとき、
道路のそばに広がる高台に住宅街が連なっているのを見かけました。
「日本では高級住宅地」と案内してくれた人に言うと、
「ノー。あれは危ない場所」という答えが返ってきたのには驚きました。
電気ガス水道などのライフラインは、高台には引かれていないことが多く、
したがって貧困層が集ってくるのだそうです。
当然治安も悪く、発砲事件も頻発します。
日本に暮らしていると、治安の格差を思い描く機会はほとんどありません。
身一つで外国の見知らぬ街を旅歩き、
事前の了解なしに現地の人たちと楽しく語り合う番組が、
格差の存在を見えないものにしてしまいます。
ロケ隊が事件に遭遇しないことの方が、実は奇跡なのです。
日本とおなじ感覚を持った人がテレビの向こうにいると信じ切ることは、
思考停止を意味します。