本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

#貴志謙介「戦後ゼロ年 東京ブラックホール」

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「定めた狙いに向かって、ひたすら深掘りする」。

広く浅くではなく、狭く深くが番組制作の決め手なのだそうです。

「関係者を丹念に当たっていくうちに、最初は点のように見えていた景色が、線になり、面のように見えてくる」と制作者はいいます。

戦後ゼロ年 東京ブラックホール|NHKスペシャル

 

記憶にある限り、昔の風景は「オールウェイズ」などで表現されるノスタルジックでのんびりとしたものではありませんでした。

都市部を走る国電は油光りする床や、所構わず吐き散らされた嘔吐物が名物でした。

駅の改札口はたばこの煙で充満していました。

繁華街は凄みをきかせる男たちや、妙に鮮やかな恰好の女たちがいました。

川崎という土地柄もありますが、学校に行けば麻雀やタバコを口にする商店街のこどもたちがクラスを仕切っていました。

朝鮮中学校との喧嘩で腫れた頬を自慢げに見せびらかしている奴もいました。

体育会系が支配する「あしたのジョー」の冒頭に描かれていた世界観に近い記憶です。

決してあの時代に戻りたいと思いません。

「戦後ゼロ年 東京ブラックホール貴志謙介  著(NHK出版)