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#滝沢秀一「このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景」

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「このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景」滝沢秀一 著(白夜書房

ゴミ収集の体験をもとに、生活者の低い視点で見た世界。

ジャーナリストを名乗らないある意味アマチュアの視点で世界を見た本。

不可視。見ているように見えて実は誰も見ていない世界を見ていく動きが広がっています。

 

 

昭和の頃、ゴミ処理の現場で働く人は差別の対象でした。

人が嫌がる仕事に従事するのは特定の人たちと世間が認識していたからです。

ですから当然、ゴミ処理の仕事を単なるお仕事紹介としてテレビで伝えることにも決死の覚悟を求められました。

権利者団体の力も強力でした、政治的な力だけでなく、猿山のような構造の利権関係もあり、現場取材はヒマラヤや秘境をロケするくらいの神経が必要でした。

作業員の顔を写さないこと。立ち入った話を聞かないこと。生活ぶりを描かないことなど、北朝鮮取材並みの条件がつけられたのです。

「事態は昔と変わらない」という声があるのは重々承知。

しかし、働く現場をオープンにすること。つまり「見える化」が進んだことは画期的なことです。情報を隠蔽することは事故や事件に繋がります。物事をオープンにすることは、利権をもつ組織や人にとっては迷惑なことかもしれませんが、コマのようにすり潰されようとしている人たちにとっては偏見をなくす上で極めて大切な試みだと思います。

そうした意味では、著者の滝沢秀一さんと書籍の編集者はパイオニアとしての役割を果たしました。

著者の目線で現場を見て、人物や出来事を想像していくうちに私たちは自分の身の回りに変化が起き始めている変化に気づくはずです。

実はそれが大切。著者の狙いはそこにあります。 

一旦記憶の中に刻みこまれた著者のネームバリューは簡単なことでは消し去ることができないからです。