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「黒書院の六兵衛」がベスト入り

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「黒書院の六兵衛」浅田次郎 著(文藝春秋

江戸城明け渡し迫る中、開城のため、官軍のにわか先遣隊長として、送り込まれた尾張徳川家・徒組頭の加倉井隼人。勝安房守に伴われ宿直部屋で見たのは、無言で居座る御書院番士だった。ここで悶着を起こしては江戸が戦に。腕ずくで引きずり出してはならぬとの西郷隆盛の命もあり、どうする、加倉井。奇想天外の傑作ここにあり。

テレビの時代劇が存亡の危機に立っています。時代劇を手がける担当者の話によると時代劇は一度やめると復活がとても難しい番組なのだそうです。衣装や化粧、結髪や大道具と、時代劇になくてはならない美術部門は相応の知識と技術を持つ人たちによって支えられています。彼らの技を次世代に伝えるためにも恒常的な仕事が必要です。

経費を抑えるために登場人物の対話に軸足を置いた番組が作られました。歴史ファンに受け入れられたものの、エンタメ志向の視聴者からは「サムライミーティング」と揶揄されて落ち込んだと担当者はこぼしていました。

 

野外の殺陣シーンなどの撮影環境の確保も大変です。ロケ地、都市化の影響は背景となる景観に及んでいます。舗装されていない道路や電線のない空、古い町並みは見つかりません。やむなくセットで撮影することになりますが、セットは維持管理に相当な手間と経費がかかります。時代劇は時代考証もゆるがせに出来ません。言葉遣いや生活用具、立ち居振る舞いなど細かな所に目が届く人の育成も時間がかかります。

時代劇担当者の願いは、時代に受け入れられる、良い原作に支えられたしっかりしたシナリオの登場です。組織人の悲喜こもごもをユーモラスに描いた浅田次郎の時代劇に注目する担当者は少なくないように思います。 

黒書院の六兵衛 上 (文春文庫)

黒書院の六兵衛 上 (文春文庫)

 
黒書院の六兵衛 下 (文春文庫)

黒書院の六兵衛 下 (文春文庫)