「東芝事件総決算 会計と監査から解明する不正の実相」久保惠一 著(日本経済新聞出版社)
暗黒街の帝王と言われたアル・カポネをお縄にするきっかけとなったのも金の記録でした。映画「アンタッチャブル」は、カポネを逮捕しようとするアメリカ合衆国財務省捜査官たちのチーム「アンタッチャブル」の実録物語です。周到に尻尾を表さないカポネを前に、チームが掴んだのが出納人の存在でした。出納人がもつ大きな帳面にはカポネが手にした商売の記録が残されている。この存在に気づいた場面からドラマは急展開していきます。
金の流れの全貌をつかむことが犯罪を立証する有力な手段であることは今も昔も変わりません。肝心なのは不正を許さないという第三者の目であることが教訓として伝わってきます。
東芝事件総決算 会計と監査から解明する不正の実相
「パソコンのバイセル取引」「原子力事業の減損問題」「企業結合の会計処理」「取得価格配分手続」・・・全てが明らかに。
東芝の不正会計が、日本のどの会社でも起きるようなものだとすると、この事件の本質――会計や監査上の問題点――を理解しなければ、他山の石になりません。ただ、会計や監査の知識が乏しいビジネスパーソンにとっては、この事件は理解は困難です。
東芝事件は会計や監査に関する様々な問題を提起しましたが、この事件の特徴は、東芝から発表された情報のほか、関係者による通報などで、ほぼリアルタイムで事件が進行した点にあります。しかし、専門家でない読者はもちろん、メディアの報道でも曖昧な(平易すぎる)記述になっていることが、この事件に対するさらなる誤解を招く要因でした。
本書は、会計士の著者が、事件の発端から現在までを分析、平易な言葉で事件の本質を解説するもの。そこから、会計や監査の諸問題を明らかにしていきます。過去の経緯を振り返り、会計・監査面から様々な決算・財務情報を正確に分析、東芝事件の総決算を行います。