「RED ヒトラーのデザイン」松田行正 著(左右社)
左右社には超過激な本があります。
天下泰平な日本では、所持していても美術・デザイン関係の教養本として見逃されてしまう本です。
しかし、無警戒に所持していると大変な目にあう場合があるかもしれません。
デザインは単なる色や形の組み合わせに過ぎないものです。
ここにある意味がつくと「意匠」というものになります。
意匠とは虚構です。物語がつけ加わることで特定の意味を持ち始めるのです。
「サピエン全史」によると、人類が進化したキーワードは「虚構の獲得」にあったといいます。
虚構はそれまでばらばらに行動していた個人をまとめることで組織というものに力を結集する力を持ちます。
そこに目をつけ大勢の人を熱狂の中に引きずりこむことを企んだのがヒトラーのデザインだったことをこの本は語ります。
熱狂は為政者にとって絶好のチャンスです。
バラバラな個人より、まとまってくれた方が都合がいいのです。人を欺く手法でとしてはオレオレ詐欺とよく似ています。
デザインの歴史を振り返ることは自分の利益を守る出発点であることをこの本は示唆しています。