本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

人類は幸福になったのか サピエンス全史

 本日登場の本

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「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福」(上・下) ユヴァル・ノア・ハラリ 著(河出書房新社

「人類は何を得て何を失ったのか」私たち人間が抱える根源的な問いかけに挑んだ著作です。幅広い事象をわかりやすく伝えることが番組づくりのキホンです。制作者は必ずしも専門の知識を持っているわけではありません。ですから数多くの学識経験者や研究者の知見に耳を傾け、大筋の方向を見定めて番組を構成して行くことになります。なにごとにつけても作品はしっかりした土台の上に建てるのが鉄則です。放送番組もその例に漏れません。

中世ヨーロッパの軍事史を専門とする研究者が「一つの時代、事件ではなく歴史の全体像を示したい」と出版されたこの本は、

本の土台は、所属するイスラエルの大学で受け持った世界史の講義。読みやすさの源泉は、学ぶ側と重ねた「対話」だろう。「学生と意見を交わす中で、学生が何に興味を持ち、どこに力点を置くべきかが分かり、構想が固まった」。最初はヘブライ語で出版し、読者の反応を踏まえて改訂を加えた英語版を出した。

と挑んだ労作で48カ国で出版されました。取るに足らない生物だったホモ・サピエンスが、なぜ地球を支配するに至ったのか。「大きな問いに対して科学的な方法で答えている。しかも一般の人にも分かるストーリーになった」という評判が、早耳の放送局員の中でも関心を持たれているようで、商品の動きが出ています。

 

書評のポイントは人類の進歩と幸福感を巡る論考で、人類の歩みを、言語獲得による「認知革命」、農耕を始める「農業革命」、そしてヨーロッパ発の「科学革命」を軸に論じた点にあると言われています。呈示された見方や方向性は番組制作者の創作意欲をかき立てそうな気がします。

ユニークなのは、大変革が人々の幸福にどう関係したかという視点だ。たとえば農業革命によって、人々は狩猟採集より過酷な単純労働を強いられ、一面では不幸になったと考える。「人類は、より大きな力を得ることにはたけているが、その力を幸せに転換する能力は高くない」と喝破する。

素材というより企画の柱を形作るような著作といえそうです。

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福