本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

書店員X 「常識」に殺されない生き方

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「書店員X 「常識」に殺されない生き方」長江貴士*1 著(中央公論新社

昨年、書店業界を席巻した「文庫X」。その仕掛け人が、独自の発想法や今後の小売のあり方、さらには行き辛さを抱えた人々へメッセージを語る。

昨年、全国の書店や出版業界を驚かせた本が「文庫X」。

表紙を手書きのカバーで隠し、書店員が書いた推薦文で読者にアピールした本は、

全国650以上の書店を巻き込み、30万部を超えるヒットを記録しました。

そもそも売り物を隠して売るという方法そのものが掟破りです。

書店の常識を無視した販売がなぜ許されたのか。

企画した書店員とはいったいどんな人物だったのか。

書店関係者からすると革命的な売り方がなぜ成功したのか。

全国の書店員が注目した「文庫X」の舞台裏が本になりました。

書いたのは東北の地方書店さわや書店の書店員・長江貴士さんです。 

本書では、ヒットに至るまでの道のりとアイデアの秘訣を分析し、それらと著者自身の半生を踏まえた上で、世の中を生き抜く力について語る。
目次
第1章 「文庫X」とはなんだったのか?(「文庫X」の本質;「文庫X」を支えた考え方;誕生から区切りまで;「さわや書店」という異空間;小売店のこれから)
第2章 「普通」からの逸脱―「逃げる」を肯定する生き方
第3章 世の中を疑ってみる
第4章 「常識」や「先入観」を超えた先の「自由」
対談 「文庫X開き」―清水潔×長江貴士
付録 文庫Xを作ったもの

読者のみなさんからするとどうでもいい話かもしれませんが、書店員から見ると元気を与えてくれる本と言えます。

 

*1:1983年静岡県生まれ。書店員。慶應義塾大学理工学部中退。神奈川県の書店で10年近くフリーターとして働いた後、2015年に岩手県のさわや書店に入社。自ら就職活動も転職活動も一切しないまま現在に至る。2016年にさわや書店フェザン店で開始した「文庫X」の企画者として注目される。本作が初の著書となる

キネマ旬報ベスト・テン90回全史

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キネマ旬報ベスト・テン90回全史」(キネマ旬報社

1924年の第1回開催以来、戦争による中断をはさんで 2016年のベスト・テンで90回を数えたキネマ旬報ベスト・テン
各年度のベスト・テン結果のデータおよびランク入りした全作品の順位紹介を中心に、戦後は各年度の映画状況、興行ベスト・テンや映画界10大ニュース、コラムやデータも充実させた永久保存決定版!

映画関係の本といえばキネマ旬報社が頭に浮かびます。

映画ファンなら”買わざるを得ない本”が発売されました。

キネマ旬報社から、「全史」発売を機会にイベント企画が届きました。

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劇映画の放送に携わる上で、要の役割を担うのが映画購入担当者です。

放送にあたって配給会社から放送権というものを買い取ります。

放送権には放送期限が設定されています。

その期間内で何回かの放送ができるという契約です。

この契約には条件がつけられています。

複数の映画を何本かまとめて売り買いするという約束です。

ヒットした映画を一本だけ契約することができないのです。

様々な作品が契約に"福袋"の商品のように詰め込まれているため、

映画の目利きが購入に携わらないと、無駄な権利を手に入れることになります。

全ての映画に目を通すことは物理的にムリなので、

担当者は映画評論誌などに目を通し、作品の内容や評価を頭に入れます。

キネマ旬報の本は、担当者にとって欠かすことのできない必携本といえます。

 

11月の「このマンガがすごい!」ランキング オンナ編

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宝島社「このマンガがすごい!」編集部が運営するマンガ情報サイト『このマンガがすごい!WEB』。選者が選んだ11月のランキングが発表されました。

 

1「あたらしいひふ」高野雀 著(祥伝社

服ばかり選んでしまう地味系の高橋。
モードな服をかっこよく着こなす渡辺。
コンサバな服しか着れないことがコンプレックスの鈴木。
かわいく盛ることで武装するギャルの田中。

同じ会社で働いているのに、見た目も価値観もバラバラな彼女たち。
同じ女でもこんなに違う。女4人の、服にまつわる4つのストーリー。

2「うらみちお兄さん」久世岳 著(一迅社

よい子のみんな~!
裏を知れば表が見える、それが人生だよ~!

「第3回 次にくるマンガ大賞」“Webマンガ部門"第1位!
WEBマンガ総選挙」“インディーズ部門"第1位!

Twitter&pixivで話題騒然の体操のお兄さんマンガが、
50ページ以上の描き下ろしを加えてついに書籍化!!

教育番組「ママンとトゥギャザー」の体操のお兄さん・表田裏道(31)。
爽やかだけど情緒不安定な“うらみちお兄さん"が垣間見せる大人の闇に、
よい子のみんなはドン引き必至…!?
大人になった“よい子"たちに送る、哀しみの人生賛歌!

 

3「原始人彼氏」北福佳猫 著(白泉社

恋がしたい女子高生・神米美大。イケメンにモテまくってはいるけれど軟弱者ばかりの高校生活にうんざりする毎日。そんなある日、農耕の女神・スピカが現れて「婚活斡旋」と称して美大をタイムスリップさせる。行き先は巨大生物が往来する250万年前の地球! そこで美大が出会う「運命の一人」とは!? 王道原始人ロマンス開幕──!

 

4「凍る空、砂鉱の国」青井秋 著(秋田書店

触れたものを縮小してしまう“銀砂嵐"によってできる風景が閉じ込められた結晶“フラグメント"。
小さな村でフラグメントの細工職人見習いをしている少女・セッカは一人前の職人になる日を夢見て師匠の下で日々奮闘していた。
そんなある日、彼女の住む村が銀砂嵐に飲み込まれてしまう。すべてが失われる絶望の中、彼女が出会ったのは不思議な少年で…!?
手のひらの異国ジュブナイル・ファンタジー、開幕!!

5「ガイコツ書店員 本田さん」本田 著(KADOKAWA

本屋さんの楽しいお仕事コミック、第3巻! とまらない重版の嵐!! 爆笑必至のガイコツ書店員コミック 第3巻! どの書店にいっても欲しい本が見つからない…なぜなら皆も同様に求め買っているから! 本好きなら一度は経験するあれやこれやそれや。本田さんと楽しい仲間たち(書店員さん)でお届けします!

6「カフェでカフィを」ヨコイエミ 著(集英社クリエイティブ)

誰かと話をしたくなったら…。ひとりになりたくなったら…。カフェに行ってみませんか? お茶をかこめば、どこでもいつでも、そこはカフェになる。ちょっぴりユーモラスな16編を収録したショートストーリーコミックス。

6「デザイナー 渋井直人の休日」渋谷直角 著(宝島社)

2015年に刊行した『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』が映画化され(2017年9月公開)、いま、もっともノリにのっているコミック界のニューレジェンド、渋谷直角の最新作!

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不惑を越えてなお、煩悩に悩むサブカル中年・渋井直人がおりなす、ペーソス溢れる日常を描いたショートストーリーの連発は、同世代だけでなく、広く読む者の心を突き刺すこと必至!

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ファッション誌『otona MUSE』にて連載中の同名コミック、待望の書籍化です。

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8「ストレンジ・ファニー・ラブ」チョーヒカル*1著(祥伝社

恋はみっともなくてくだらなくて最高だ。 奇才チョーヒカルがコミックスデビュー!! 最高に可愛くて尊い、ほんの少しだけ現実とズレた世界での8つの恋のお話が納められた短編集で、同人誌にて発表した2編以外、すべて描き下ろしとなります。

9「子育てビフォーアフター吉川景都 著(新潮社)

「産む前と後ではマジで世界観が180度変わった!」 娘えっちゃん、飼い猫4匹で、毎日はてんてこまい。子育ての日々は、「思ってたんと違う」ことの連続で…。ツイッターで大反響を巻き起こした「笑いと涙の子育て日記」、描き下ろしも多数収録してコミックス刊行開始!

9「保健室の影山くん」天乃忍 著(白泉社

「先輩、俺の食糧になってください」
日和に告白してきた影山の正体は、吸血鬼!!
食糧管理と称し、淡々とした表情で過保護に付き纏う。翻弄されつつも逃げる日和。一方、影山は吸血のため日和に自分を好きにならせようとするが…!?
ラストゲーム」の天乃忍が描く吸血鬼男子の捕食ラブコメディ★ 

*1:アーティスト・イラストレーター 1993年3月29日東京生まれ、武蔵野美術大学卒業。UNUSUAL(非日常)ARTをテーマに掲げ、体にリアルな目や物を描くボディペイントや衣服のデザイン、イラスト、立体、映像作品などを制作。本作で漫画家デビュー。

図解入門 最新 ミサイルがよ~くわかる本

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「図解入門 最新 ミサイルがよ~くわかる本」井上孝司 著(秀和システム

あなたは「北朝鮮弾道ミサイル」や、それを迎え撃つ日本やアメリカの「ミサイル防衛システム」の機能や長所・短所をご存知ですか? 本書は、世界各国で使われているミサイルの種類から構造・制御・誘導などのシステム、実際に使われる場面など、図版や写真を多用してわかりやすく解説したミサイル入門書です。専門用語やメカニズムの解説はもちろん、ネーミングの由来や発射後のペンキ塗りなど、楽しいこぼれ話も満載です。

現実社会のありようを再構成して伝えるのがテレビの仕事です。ニュース番組に「ロフテッド軌道」などというマニアックな言葉が飛び交う時代。

世の中の関心が集まるテーマほど図解や考証の仕事が集中します。解説に使う模型やドラマなどのセットデザインに携わる人たちの中にミリタリー愛好家やメカの専門家が多いのは、必要に迫られた結果だという人もいます。

最近照会が増えてきたのが北朝鮮ミサイル関係のメカニズムデザインです。著者は現代兵器解説の第一人者。需要に応えて早速出版したのが秀和システムという出版社。パソコンやインターネットのガイド本コーナーでよく目にする技術系出版社です。

茶飲み話の話題程度で済ませて欲しい本です。

 

Made in North Koreaという本

知られざる隣国の正体とは・・・

WIREDウェブが、北朝鮮のグラフィック事情を特集する記事を出しました。その記事の中に、ネタ元の洋書を紹介していたため、その照会がこの本屋にもありました。

洋書のお問い合わせは苦労します。

出版の流通に洋書は乗っていないため、手続きに手間暇がかかるのです。

ネット通販などを利用していただいた方が多分早く手に入るように思います。

紹介された本は面白そうなので機会があれば手に入れてみたいと思います。 

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「Made in North Korea」 ニック・ボナー 著(2017年10月に英国の出版社ファイドンから刊行)

北朝鮮のレトロなグラフィックデザインは、「閉じた国」ならではの世界観に満ちている

北朝鮮がどんな国なのかぼくらは何となく知っているが、そこにどんな景色が広がっていて、どんな物が流通しているのかよくわかっていない。20年以上にわたって北朝鮮グラフィックデザインを追いかけてきたニック・ボナーの『Made in North Korea』は、デザインという観点から北朝鮮の新たな姿を見せてくれる。

wired.jp

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ニック・ボナーは英国で建築を学んだのち、北京を拠点に1993年から20年以上にわたって北朝鮮ツアーを敢行してきた。ツアーのたびにボナーはグラフィックのコレクションを増やしていき、現在その数は数百以上にのぼるという。その多くが手描きでつくられたグラフィックは奇妙に見えるものもあるが、ときにレトロスペクティヴでもあり、美しい。 

 

多分滞在中に著者が手にした商品から採ったのでしょう。本書にはホテルのパンフレットや菓子のパッケージ、宣伝用のポスター、飛行機のノヴェルティなど、北朝鮮で生まれたさまざまなグラフィックが収められています。 

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Phaidon's new book explores graphic design in North Korea

 

印刷技術の違いもありますが、そもそも商品宣伝というものの考え方自体が根元からちがうことがよくわかります。わが国も、かつてこのようなティストの広告が大手を振っていた時代があったことを思い出しました。

 

 

 

 

じけんじゃけん!

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「じけんじゃけん!」安田剛助 著(白泉社

広島カープお疲れ様でした。

ゲーム差が離れていても勝負は時の運。なにがおこるかわかりません。

書店でいうと「何が起こるかわからない魅力」のがミステリーです。

欲求不満のカープファンの皆さんにお奨めしたいのがこのコミックです。

広島とミステリーの味わいが凝縮された強烈な一冊。 

なにせ、登場する女の子がみんな広島弁を話しているのにはインパクトがあります。

中国地方以外に住む人にとって、ヤクザ映画くらいでしか接したことのない広島弁です。

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可愛い女の子が「~じゃけん」 とか「ぶち殺す」なんて会話するのですから、はじめての人にはギャップや刺激が強すぎます。

広島出身の知人に聞くと、広島ではベストセラーを争う本で、東京土産に買っていく人もいるという話もあるくらいの人気なのだそうです。

クセのあることばを聞きながらを味わいながら密室トリックを解くという本は他に類を見ません。 

自虐コミックとは呼べない新しい世界をこの本は切り開いて行くのかも知れません。

じけんじゃけん! 1巻 - BookLive! Browser Viewer

 

百円の男 ダイソー矢野博丈

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「百円の男 ダイソー矢野博丈」大下英治 著(さくら舎)

「これが100円か! 」で日本人に衝撃を与えた100均のダイソー(1977年12月設立)。
創業者・矢野博丈は学生時代から七転八起! いくつかの事業を失敗して、スーパー
などの店先で棚板に商品を並べて「100円均一」で売ったところ大当たり。一日で
100万円を売り、スーパー店長が仰天。その成功の秘密は利益一円でも売ることに
あった。先行するライバルは100円の粗悪品、ダイソーは「100円の高級品」。利益
一円でも売る商法である。この差が消費者の心をつかんだ。

常設店舗一号はダイエーの隣。その後も色々とあったが、月に68店舗を出店した時期も
あった。現在は国内外に4,700店舗。しかも、商品の99パーセントが自社開発商品である。
本書では、あまりマスコミに出ない矢野社長を、同郷のジャーナリスト大下英治氏が
徹底取材。前例のない「100円商法」の波瀾万丈・型破りの経営を描く!

よく売れる本のジャンルの一つに評伝ものがあります。

テレビ関係者から「番組づくりのセオリーは人間に密着することだ」とよく聞きます。番組企画のネタ探しのため、評伝ものを読み込む制作者は少なくありません。

最大の理由は、人間は誰しも他人の生き方に興味を持つからだそうです。物ごとや知識はネットを調べればある程度手に入れることはできますが、他人の生き方は本人から直接聞き出さないことには手に入れることはできません。

また、取材対象となった人物のドラマを、テレビ制作者が活字からあらかじめ知ることができるのも評伝の魅力です。活字メディア同士だとパクリと呼ばれるようなことでも、テレビと活字はメディアが違うのであまり問題になりません。活字では人物の声色やクセ、性格などといった人物の持つ肌触りや”時間の経過"という情報を伝えることも苦手だからです。

ネタやドラマの発掘に加え、取材交渉の作業もネタ本があると楽です。

人生のピンチを逆転して成功を掴んだ番組がありましたが、本書などは企画のネタとして役に立つのではないでしょうか。

 

百円の男 ダイソー矢野博丈

百円の男 ダイソー矢野博丈