本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

週間ベスト10

新書部門のランキングです。 

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京都・アバンティブックセンター京都店調べ(5月9日~15日)

蓄積したランキング表を眺めると、京都の書店では岩波書店発行の新書がよく売れていることがわかります。書店側の力のいれ具合か、土地柄かはわかりませんがベスト10は複数のデータを照らし合わせながら読み解くのが「ベスト」だと思います。

 

1「京都ぎらい」井上章一 著(朝日新聞出版)

洛中千年の「花」「毒」を見定める新・京都論である。

2「憲法の無意識」柄谷行人*1 著(岩波書店

なぜ戦後七〇年を経てもなお、改憲は実現しないのか。なぜ九条は実行されていないのに、残されているのか。改憲護憲の議論が見逃しているものは何か。糸口は「無意識」。日本人の歴史的・集団的無意識に分け入り、「戦争の末の」平和ではない、世界平和への道筋を示す。「憲法の無意識」が政治の危機に立ち現れる。

3「中国4.0 暴発する中華帝国」エドワード・ルトワック*2 著(文藝春秋

二〇〇〇年以降、「平和的台頭」(中国1・0)路線を採ってきた中国は、二〇〇九年頃、「対外強硬」(中国2・0)にシフトし、二〇一四年秋以降、「選択的攻撃」(中国3・0)に転換した。来たる「中国4・0」は?危険な隣国の真実を世界最強の戦略家が明らかにする。

4「京都の歴史を歩く」小林丈広*3、高木博志*4、三枝暁子*5
著(岩波書店

観光名所の賑わいの陰でひっそりと姿を消す町家の風景。雅な宮廷文化、豪奢な桃山文化に彩られた「古都」のイメージが流布するなか、つのるのは違和感ばかり。これが、京都なのだろうか…。一五の「道」と「場」をめぐり、本当の京都に出合う小さな旅へ。かつて都に生きた人びとの暮らしと営みに思いをはせる。

5「昭和史」古川隆久*6 著(筑摩書房)

日本はなぜ戦争に突き進んだのか。私たちは、何を失い、何を手にしたのか。戦時体制へと向かう戦前から、国家総動員体制となった戦中、敗戦を経て飢えと貧困にあえいだ戦後前半、そして高度成長期の戦後後半へと至る激動の六四年間。それはいわば日本が国家として自立を目指し、挫折し、再起する過程であり、そのなかで培われた土壌は現代もなお息づいている。未完の過去を、第一人者が一望にする昭和史の決定版。

 

6「やりなおし高校化学」齋藤勝裕*7著(筑摩書房)

法則などを覚えることが多く、難しいイメージがある化学を「原子」「周期律表」などにわけて解説する。図やイラストが豊富で、重要部分の字を色分けしている。興味はあるけど、化学は苦手。そんな人は注目! 原子の構造、周期表、溶解度、酸化・還元など必須項目をやさしく総復習し、背景まで理解できる「再」入門書。

7「雇用身分社会」森岡孝二 著*8岩波書店) 

労働条件の底が抜けた?派遣はいつでも切られる身分。パートは賞与なし、昇給なしの低時給で雇い止めされる身分。正社員は時間の鎖に縛られて「奴隷」的に働くか、リストラされて労働市場を漂流する身分―。こんな働き方があっていいのか。この三〇年で様変わりした雇用関係を概観し、雇用身分社会から抜け出す道筋を考える。

8「鎌倉幕府と朝廷〈シリーズ日本中世史 2〉」近藤成一*9 著(岩波書店

史上初めて、京都から百里以上を隔てる僻遠の地に創られ、以後百五十年にわたって存続した新たな政権、鎌倉幕府。朝廷と並立する統治のあり方はなぜ生まれたのか。そのことは日本社会をどう変えたのか。源平争乱から幕府誕生、執権政治の時代、そしてモンゴル戦争を経て崩壊に至るまで、鎌倉幕府の時代を描ききる。

9「エロティック日本史 古代から昭和まで、ふしだらな35話」下川耿史*10 著(幻冬舎

風俗史家が古代から日本の歴史と密接に関わってきた性のエピソードを紹介した。「記記*11」から説き起こす。

日本の歴史にはエロが溢れている。国が生まれたのは神様の性交の結果で(そしてそれは後背位だった)、奈良時代の女帝は秘具を詰まらせて亡くなった。豊臣秀吉遊郭を作り、日露戦争では官製エロ写真が配られた。―本書ではこの国の歴史を彩るHな話を丹念に蒐集し、性の通史としていたって真面目に論じてゆく。「鳥居は女の大股開き」「秘具の通販は江戸時代からあった」など驚きの説が明かされ、性を謳歌し続けてきたニッポン民族の本質が丸裸になる!

10「違和感の正体」先崎彰容*12 著(新潮社)

メディアや知識人によって語られる今どきの「正義」、何かがおかしい。どうも共感できない。デモ、教育、時代閉塞、平和、震災など、現代日本のトピックスをめぐり、偉大な思想家たち―網野善彦福澤諭吉吉本隆明高坂正堯江藤淳―らの考察をテコに、そんな「違和感」の正体を解き明かす。善悪判断の基準となる「ものさし不在」で、騒々しいばかりに「処方箋を焦る社会」へ、憂国の論考。 

*1:1941年兵庫県生まれ。哲学者。著書に『漱石詩論』(群像新人文学賞)『マルクスその可能性の中心』(亀井勝一郎賞)『坂口安吾中上健次』(伊藤整文学賞)『日本近代文学の起源』『隠喩としての建築』『トランスクリティーク』など。

*2:アメリカの歴史学者。専門は、軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。 ルーマニアユダヤ人の家庭に生まれ、イタリア、イギリスで育つ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学び、1975年にジョンズ・ホプキンス大学で博士号取得。現在、戦略国際問題研究所シニアアドバイザー。

*3:歴史学者。同志社大学文学部教授。専門は日本近現代史。 静岡県静岡市出身。金沢大学卒業。

*4:歴史学者。京都大学教授。専門は日本近代史。博士。大阪府出身。 「創られた伝統」論を元に近代天皇制にまつわる文化的要素が如何に近代以降に国民国家を支えるために意識的に創られたかを検証している。

*5:1973年生まれ。立命館大学文学部准教授。専攻は、日本中世史。著書に、『比叡山室町幕府』(東京大学出版会)、『京都天神をまつる人びと―ずいきみこしと西之京』(写真/西村豊、岩波書店)。

*6:1962年、東京都生まれ。86年東京大学文学部国史専修課程卒業、92年同大学院人文科学研究科博士課程修了、博士(文学)。広島大学総合科学部(専任)講師、横浜市立大学国際文化学部講師、助教授などを経て、2006年より日本大学文理学部教授。著書に『戦時下の日本映画』(吉川弘文館、2003年)、『昭和天皇』(中公新書、2011年)、『近衛文麿』(吉川弘文館、2015年)など。

*7:1945年生。理学博士。専門分野は有機化学、物理化学、光化学、超分子化学。おもな著書に『知っておきたいエネルギーの基礎知識』『知っておきたい太陽電池の基礎知識』『知っておきたい放射能の基礎知識』『マンガでわかる元素118』『周期表に強くなる!』『マンガでわかる有機化学』『知っておきたい有機化合物の働き』『金属のふしぎ』『レアメタルのふしぎ』『基礎から学ぶ化学熱力学』『知っておきたい有害物質の疑問100』『毒と薬のひみつ』(サイエンス・アイ新書)などがある。

*8:経済学者。関西大学名誉教授。専門は、企業社会論・株式会社論・労働時間論。

*9:歴史学者、放送大学教授。専門は日本中世史。

*10:風俗史家。地方新聞60紙のエピソードバンク「アトリエCOCO」同人。 福岡県生まれ。早稲田大学文学部社会学科卒業、産経新聞社を経て、フリー編集者、家庭文化史、性風俗史の研究家として著書多数。

*11:古事記』と『日本書紀』との総称

*12:倫理学者、日本思想史研究者。日本大学教授。専門は近代日本思想史・日本倫理思想史。