福祉番組は人間の弱い部分を見つめる番組です。他者の弱さを共有することは自分の生き方を見つめ直すことにつながります。弱いと思い込んできた部分に潜む人間のほんとうの強さに触れることができるからです。そして、人と人の仲立ちの役割を果たすのは文章です。
「自閉症の僕が跳びはねる理由」東田直樹*1著(KADOKAWA/角川学芸出版)
「会話のできない重度の自閉症者が自分の想いを伝えます」と語るのが東田直樹さん。自閉症、絵本、詩集など20冊の本を執筆。東京大学や福岡女学院大学などで講演会を開催する若い文筆家です。
「自閉の世界は、みんなから見れば謎だらけです」――会話のできない自閉症者である中学生がその心の声を綴り、世界に衝撃と感動をもたらした話題作。Q&A方式で、みんなが自閉症に感じる「なぜ」を語る。
考えてもみて下さい。生まれて一度も人に本当の言葉を伝えたことのない人間が、どんなに不安を抱えながら自分の言葉を伝えているのかを―。皆が自閉症者に感じる「なぜ?」について当事者の気持ちをQ&Aで綴り、大反響を呼んだ前著。高校生編となる本書では、会話ができず苦しみ、もがく中で気づいた喜びや希望を活き活きと綴る。『続・自閉症の僕が跳びはねる理由』を改題。文庫化にあたり16歳当時の貴重な日記を収録!
東田さんの書いた2冊の著作が話題となっています。東田さんのドキュメンタリーが放送されることになり関心を持たれる人が増えたからです。自分の言葉で生き生きと綴られた東田さんの生き方は勇気を与えてくれます。
放送予定
放送予定日 2016年12月11日(日)
直樹さんの圧倒的な言葉の力です。人と会話することがない分だけ、直樹さんは、自分の頭の中でさまざまな出来事をどう捉えるか、自問自答を繰り返してきました。その過程の中から生まれた言葉は鮮烈です。たとえば、番組のなかではこんな文章を紹介しています。
「僕は命というものは大切だからこそ、つなぐものではなく、完結するものだと考えている。命がつなぐものであるなら、つなげなくなった人は、どうなるのだろう。
バトンを握りしめて泣いているのか、途方にくれているのか。
それを思うだけで、僕は悲しい気持ちになる。
人生を生き切る。残された人は、その姿を見て、自分の人生を生き続ける」
番組情報によると、東田さんを扱ったドキュメンタリーは2年前に放送され、大きな賞を受賞したのだといいます。しかし、そのとき担当した番組ディレクターの丸山拓也さん33歳は、受賞後大きな病気を抱えることになります。
1年間の闘病を経て、何とか職場復帰を果たすことが出来ました。しかし、今も治療の後遺症や再発の恐怖に苦しんでいます。これからどんな人生が待っているのか、大きな不安にとらわれたときに、2年前に取材した直樹さんの姿をもう一度見つめ直したいと思いました。
健常者の立場から一転して、介護を受ける側に回ったディレクターは東田さんとの交流を再び番組にすることを決意します。自分が取材を受ける側になったわけです。ディレクターは東田さんに「人生を前向きに生きるためにいろいろなことを教えて欲しい」とかたりかけます。会話ができない東田さんは、ディレクターの願いをどう受け止めたのでしょうか。多くの反響が寄せられる番組となりそうな予感がします。ぜひ多くの人に見てもらい、読んで共有して貰いたいと思います。
アーカイブ番組
「君が僕の息子について教えてくれたこと」*2見始めると涙が止まらない・・・ 5月の風が吹き抜けるような爽やかなドキュメンタリー!
受賞作品情報はこちらから。
著者のサイト
続・自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない高校生がたどる心の軌跡
- 作者: 東田直樹
- 出版社/メーカー: エスコアール出版部
- 発売日: 2010/10/10
- メディア: ハードカバー
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社会の中で居場所をつくる―自閉症の僕が生きていく風景(対話編・往復書簡)
- 作者: 東田直樹,山登敬之
- 出版社/メーカー: ビッグイシュー日本
- 発売日: 2016/01
- メディア: 単行本
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