いとうせいこう氏の「想像ラジオ」*1は震災によって引き裂かれた絆を描いた話題作でした。
それまで生きてきた現実から突然引きはがされ、生死の整理が出来ぬまま苦悩する人たちの思いにどう寄り添うか。支える私たちに必要な視点は「想像力」なのかもしれません。
小説では携帯ラジオが。そして現実世界では赤いポストが現実と異界の橋渡しをする大切な役割を果たしています。苦悩は自分で抱えて生きてゆかざるを得ませんが、吐き出すことによって気持ちは少し楽になるように思います。
岩手県陸前高田市に東日本大震災で亡くなった家族や友人などに宛てた手紙が届くポストがある。その名も「漂流ポスト」。300通を超える手紙に込めた亡き人への思いとは?
夫を亡くした妻から…わが子を亡くした母親から…岩手県陸前高田市の「漂流ポスト」に届く手紙には、誰にも打ち明けられなかった思いがつづられている。「お父さん 夢でもいいから逢いにきて下さい。そして声を聞かせて下さい」「“あっ今ともが居た”とか思う時あるんだよ。近くに居るなら、顔見せて。声聞かせて。お願いだから」大切な人を亡くした悲しみとどう向き合っていけばいいのか?手紙に込めた亡き人への思いを見つめる。
放送日
2016年12月24日(土)
店舗情報
カフェ「森の小舎」
東日本大震災で大きな被害に遭った岩手県陸前高田市に、亡くした人に宛てた手紙を預かるポストがある。海を見下ろす広田半島の高台。青く茂る木々の中の砂利道を進むと、カフェ「森の小舎」がある。ペンキで「漂流Post3.11」と書かれた看板と、はがき程度の大きさの赤いミニチュアのポストが目印だ。
店主は横浜市出身の赤川勇治さん(64)。「老後の田舎暮らし」に憧れ開店したが、約1年後に震災が起きた。強い揺れに襲われ、町は津波で真っ黒に。カフェはやめようと思ったが、住民から「休憩する場所がほしい」と言われ、再開した。
仮設住宅の被災者と接する中、吐き出せない気持ちを抱えているのに気付いた。「思いを閉じ込めたままにしないでほしい」。届くことのない手紙が流れ着く場所として今年3月、受け付けを始めたところ、県内外から次々と手紙が届いた。
「あの日は苦しかったでしょう……海水は冷たかったでしょう……」「母さんがあの日から元気もなく、お前の帰りを待っている」
赤川さんが、特にうれしかったという手紙も。
「お父ちゃんはきっとお墓にはじっとしていないだろうと思っていました。漂流ポストに出したら、きっとお父ちゃんにも読んでもらえるだろうと思い、お手紙しました」
手紙は店内で読める。「書く人も読む人も救われる。思いはいつか大切な人に届くかもしれない。それまで大切に、大切に預かります」と赤川さん。宛先は郵便番号029―2208、陸前高田市広田町赤坂角地159の2、森の小舎内「漂流ポスト3.11」。匿名でもよく、被災者以外からの手紙も受け付ける。〔共同〕