広島出身の制作者が絶賛したコミックが地味に凄い。
街外れの小さな鉄工所。ワンマン社長のもとで毎日あくせく働く男たち。鉄を溶かしたりくっつけたり、ロボットの足場を作ったり、感電したり、火傷したり。そしてそれを支えたい娘と、寄り添う妻。世知辛いけどあったかい、溶接デイズへようこそ。
作者の取材力が勉強になるのがお仕事系コミックです。作者自身がその仕事に従事していた経験を持つ作品は、読んだ印象や厚みがちがいます。本書は広島で6年間実際に溶接の仕事に従事した経験を持つ野村宗弘さんが漫画誌「イブニング」に2013年まで5年間連載した作品です。
「溶接が表舞台に出ることは少ない。しかし、溶接に携わり必死に生きている人はたくさんいる。ただでさえ偏見の目で見られたりすることもある。リングに立ったことのない人をリングに上げたら読み手はどう読むか。職人の仕事はすごいと言われるが、本人にとっては普通。その普通が描きたかった」
溶接関係者が絶賛するこの作品を読むと、あらためて事実の丁寧な積み重ねの強さが胸に迫ります。
もうひとつ、特筆するのが舞台となった広島の手触りが強く伝わってくることです。その秘密は”広島弁”。広島での売れ行きがダントツに高く、じわじわ売れ続けているのには、仕事=職業に対する誇りと地元=ことばに対する愛着が読者のこころに響くからだと思います。