2011年度文化庁メディア芸術祭優秀賞の受賞展で出会ったアメリカンコミック作品。
生き苦しさ度★★★★☆
「ファン・ホーム ~ある家族の悲喜劇」が新装版として再出版されます。
救済、承認、自己否定、存在・・・読みすすめるうちに
普段考えもしなかった(というか、あえて目をそらしていた)と言葉の渦が目の前に立ち現れます。
日本の漫画文化に慣れ親しんだ気持ちで読むと、
初心者には異物感満載といえる作品です。
コマ割を眺めて行くうちに、会話劇の舞台のような世界に引きずり込まれます。
これは特定の家族の物語ではなく、自分の物語なのかもしれません。
現代文学に絵が付いたと一言で言ってしまうこともできますが、
生き方の多様性が大きくクローズアップされている今の時点であれば、
大きな反響と共感を呼ぶこと間違いない作品です。
"ちょっと変わった生き方"を選んでしまった父と娘が、文学を通じてお互いの魂の奥底をみつけあう、その作品自体が文学的な香りに満ちた珠玉のコミックバイセクシャルの父、レズビアンの私~『ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
この本の価値を認め、温め続けてきた編集者や出版社の忍耐と決断に拍手を送りたいと思います。
「ファン・ホーム ~ある家族の悲喜劇〈新装版〉」
アリソン・ベクダル 著、 椎名 ゆかり 翻訳(小学館集英社プロダクション)
ペンシルベニア州の片田舎で葬儀屋を営む家庭の長女として育てられたアリソン。英語教師として働きながら自らの耽美的な世界にひきこもる父親とは、互いに関心を持たないまま冷淡な関係が続いていた。やがて大学生になり、自分がレズビアンであることを自覚しカミングアウトしたアリソンは、父もまた自分と同じ同性愛者であることを知る。
その事実を知って数週間後、自殺とも言えるような事故によって父親が死んだ。 いったい私は、父の何を知っていたと言えるのだろう――? セクシャルマイノリティとして、文学を愛する者として、共感を覚えながらもすれちがい続けた父と娘。互いをつなぐ微かな糸を、繊細にして静謐な筆致でたどる、ある家族の喪失と再生の物語。