本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

立野純二が選ぶ2017今年の

アメリカ社会では、彼らは「ヒルビリー(田舎者)」「レッドネック(首すじが赤く日焼けした白人労働者)」「ホワイト・トラッシュ(白いゴミ)」と呼ばれている。

無名の31歳の弁護士が書いた回想録が、2016年6月以降、アメリカで売れ続けている。著者は、 「ラストベルト」(錆ついた工業地帯)と呼ばれる、オハイオ州の出身。貧しい白人労働者の家に生まれ育った。 回想録は、かつて鉄鋼業などで栄えた地域の荒廃、自分の家族も含めた貧しい白人労働者階級の独特の文化、 悲惨な日常を描いている。ただ、著者自身は、様々な幸運が重なり、また、本人の努力の甲斐もあり、 海兵隊オハイオ州立大学→イェール大学ロースクールへと進み、アメリカのエリートとなった。今や ほんのわずかな可能性しかない、アメリカンドリームの体現者だ。そんな彼の目から見た、白人労働者階級の 現状と問題点とは? 勉学に励むこと、大学に進むこと自体を忌避する、独特の文化とは? アメリカの行く末、 いや世界の行く末を握ることになってしまった、貧しい白人労働者階級を深く知るための一冊。