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「中国共産党とメディアの権力関係」

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中国共産党とメディアの権力関係――改革開放期におけるメディアの批判報道の展開」王冰(おう ひょう) *1明石書店

改革開放以降、批判報道に関する共産党の認識と、メディアによる批判報道の展開が、それぞれどのようなものなのかを明らかにし、その上でメディアが批判報道を行う際、どうやって共産党の報道方針に抵抗し、またなぜ共産党の報道方針に抵抗できたのかを解明。

中国を取材するテレビ取材班には、必ず通訳と称する中国当局の人間が付きます。

番組取材班に協力するわけではなく、ふだんはぶらぶらしながら取材者の行動に目を光らせ、行動を逐一報告する存在です。

地方に行くと、その地方の通訳や、あろうことかその関係者や親族までが同行するケースもあります。

彼らの日当や宿泊費は取材班に請求される仕組みになっているので、取材予算は膨れあがります。

そんな話を長年中国取材を続ける担当者から聞きました。

無印良品の宣伝資料没収など、このところ外国メディアの同行に神経を尖らせるニュースが続きますが、この国のものの見方や振る舞いには十分注意して臨むことが不可欠のようです。

本書は筑波大学の中国人研究者がまとめたもの。中国取材をする放送局員は目を通しておきたい本の一つです。

自由にものが言える世界のありがたさを感じます。 

 

 

 

*1:2005年来日。筑波大学大学院地域研究研究科修士課程,筑波大学大学院人文社会科学研究科博士課程修了,博士(学術)。 筑波大学人文社会科学系リサーチアシスタント,非常勤研究員等を経て,現在は中山大学コミュニケーションと設計学院講師,中山大学国家治理研究院研究院研究員。 主要著作:『中国市民社会・利益団体:比較の中の中国』(共著,木鐸社,2014年),『大震災・原発危機下の国際関係』(共著,東洋経済新報社,2015年),「メディアの『世論監督』機能に関する中国共産党の認識」(『筑波法政』,2013年),「中国メディアによる「批判報道」――『南方週末』の事例」(『アジア研究』,2015年),「中国における「突発的事件」をめぐる「批判報道」の展開――『南方都市報』の炭鉱事故報道を事例に」(『中国研究月報』,2017年),ほか。