「その医用画像、異論あり」東将吾 著(ダイヤモンド社)
科学番組の難しいところは、ものごとをやさしく描くことだと言います。
ベテランの番組担当者になるほど、話ぶりがわかりやすくなるのは、 常にそのことが頭から離れないからかもしれません。
企画・演出に詰まった時、大先輩のディレクターから教わったのは 「珍なる実験」に挑戦して見ろということでした。
オモチャのような大げさな模型を使って実験したり、 カラフルな色やにぎやかな音をつけてみたり、 子どもが面白がるような仕掛けを考え、 そこに科学の理屈を重ねてみせるという方法です。
意外な見せ方に、科学者たちが面白がってくれたらそれは本物。
自信を持って番組に使いなさいというわけです。
ふだん理詰めで研究に打ち込む科学者にとって、新鮮な視点は貴重な経験です。
思いもよらない発想が新たな発見に繋がっていくことを多分わかっているからです。
私たちが健康診断などで撮影される画像も同じです。
医師の説明にただただ聞き入るだけで、
ついつい変な部分が見つからないかという結果だけに私たちの関心も向きがちです。
無味乾燥に見える映像には膨大な情報が詰まっているはずです。
「別の視点で見ると何かが見つかるかもしれない」
そう考えた瞬間から、ワクワクするような世界が見えてくるかも知れません。