「警視庁犯罪被害者支援室の女」六月柿光 著(小学館)
コミックは楽しみの一つです。
しかし、テーマや取材がシッカリした作品に出会うと、楽しみながら学ぶ。気がつくといった得した気分になります。
書店には取材関係者が良く立ち寄ります。
放送局で働く記者が、駆け出しのころ必ず担当する仕事がサツ回り。
警察取材です。警察幹部の顔色を伺いながらニュースネタを探る仕事で、結構キツイ仕事です。
「夜回り、朝駆け」とは、警察幹部が公務を終え自宅に戻ったところを捕まえて話を聞くこと。世間話の微妙なあやの部分に特ダネが隠れていることがあるからです。
世の中の悪党を相手にする警察関係者は、男女問わず必然的に威圧的になります。パワハラの象徴のような人たちの相手をする取材者も無意識のうちに威圧的な態度が伝染します。ですから、放送局の中でも記者の存在は雰囲気だけでわかると言われます。
その潮目に変化が現れてきたのはつい最近。本書で描かれるような犯罪被害者の存在に光が当たり始めたのがきっかけでした。
権力を持つ側が抱える不合理な体質も、世論の動きに譲歩せざるを得ない時代を迎えていることが、こうした作品の中から読み取れます。
犯罪被害者に「寄り添う」という任務…!
警察官の夫が謎の自殺を遂げ、その真相をいぶかしながらも
幼い息子・光(ひかる)を一人で育てる主人公・静(しずか)。大学院で学んだ心理学を武器に
「犯罪被害者支援室」という部署で働く彼女は、
現実の残酷さ・不可解さに打ちのめされながらも
持ち前のまっすぐな正義感と、人を思いやる心を失うことなく
少しずつ成長してゆく…!