本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

#大越健介「「激動の世界をゆく」大越健介取材ノート」

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「「激動の世界をゆく」大越健介取材ノート」大越健介 著(小学館

あのニュースの舞台裏では、何が起きているのか。そこで生きる人たちは、いったいどんな思いでいるのかを探ってきた「激動の世界をゆく」。時間に制約があるテレビではすべてを語る事はできません。映像化できない情報も含め活字には活字なりの力があります。テレビと比較しながら読みすすめると新たな発券があります。

#国分拓 「ノモレ」

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「ノモレ」国分拓*1 著(新潮社)

優れた番組制作者は優れた書き手でもあります。それは取材対象との距離感や関係の結び方がぶれないからです。

「きょう電車で席を譲ったひとが、あしたひとを殺す――それが人間だと思っている」国分拓

影絵:わたしがみた「国分拓」 (前篇) - livedoor Blog(ブログ)

著者の生き方に惹かれて買う人がいる本の一つです。

 

*1:1965(昭和40)年宮城県生れ。1988年早稲田大学法学部卒業。NHKディレクター。手掛けた番組に「隔絶された人々 イゾラド」「マジカルミステリー工場ツアー」「ファベーラの十字架 2010夏」「あの日から1年 南相馬原発最前線の街で生きる」「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」「ボブ・ディラン ノーベル賞詩人魔法の言葉」など。著書『ヤノマミ』で2010年、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、2011年大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

#池上彰 「もっと深く知りたい!ニュース池上塾」

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「もっと深く知りたい!ニュース池上塾」池上彰 著(祥伝社

ニュース番組の制作者は、視聴者像を中学1年生に想定しているのだそうです。

専門用語は使わないか、もしくはできるだけ平易な日本語に言い換えているのはそのためです。

それでも世の中の変化は激しく、伝える情報も断片的なものになりがちです。

しかし、平均的なニュースの持ち時間は一分半程度。

当然、基礎的な情報まで説明できる時間はありません。

"中学生にもわかる”という内容をめざしながらも、ニュースがわからない人があらわれるのはニュースの背景にある「なぜ」という疑問に答えきれていないからかも知れません。

「こどもニュース」のキャスターを長らく勤めた池上彰さんは、ニュースに躓く人たちの気持ちをよくわきまえています。

「常識としてあらかじめ知っていてもらわなくては困る」と考えるニュース制作のジレンマを考え抜いてきた経験と自信が、読者の心を鷲づかみしているようです。

 

#白川優子「紛争地の看護師」

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「紛争地の看護師」白川優子 著(小学館

外務省のサイト「海外安全ホームページ」は海外取材をする際、まず最初に確認しなくてはならない情報の一つです。

ここには世界各国の治安に関する最新情報がまとまっていて、現地の安全を確認できます。

渡航・滞在にあたって特に注意が必要な場合に発出される情報で、最新の現地治安情勢と安全対策の目安を示す「危険情報」と、限定された期間、場所、事項について安全対策の観点から速報的に発出される「スポット情報」から成ります。

www.anzen.mofa.go.jp

 

取材計画が承認されるのは「レベル1:十分注意してください。」までです。

レベル2以上になると渡航はほとんど認められません。

テロや治安の悪化といった危険だけでなく、疾病の流行もあります。

海外に行ってみてわかるのは、その土地のもつ危険な匂いです。

日本にもヤバイ場所というのはいくつかありますが、天変地異を除いて、生命の危機を感じる場所はほとんどありません。

しかし海外には危険な雰囲気がごく普通に存在しています。

海外で仕事をするテレビクルーは、基本的に危険な場所で単独行動はしません。

レベル1の条件でも、安全な条件を確保し単独行動は避けます。

クルーは現地事情に精通した取材源を確保し、その情報を元に番組を制作するのです。

放送時間の枠からこぼれ出たヤバイ場所のやりきれない現実が綴られた本。

安全な日本の視聴者に伝えたい想いが閉じ込められています。

 

#ダイヤモンド経営者倶楽部「ザ・ファースト・カンパニー2018――創造と革新を求め続ける企業」

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「ザ・ファースト・カンパニー2018――創造と革新を求め続ける企業」ダイヤモンド経営者倶楽部 編(ダイヤモンド社

優良企業を取材すると、商品やサービスの面白さだけでなく、思いがけない発見をすることがあります。それはモノを生み出すヒトの発見です。

イノベーションの難しさは、0を1にすることにあるとよく聞きます。1を2や3、百や千に増やすことよりも、何もないところから1を生み出すことの方が相当大変なのだといいます。世の中にないものを発見し開発することができたのはヒトの力があってこそ。ヒトの力が面白いのがこうした優良企業が持つ魅力なのかもしれません。 

 

#塚本久美「月を見てパンを焼く」

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「月を見てパンを焼く」塚本久美*1 著(カンゼン)

パンづくりは、仕事であり、趣味であり、生きていることそのもの。
月の暦に合わせて20日間パンを焼き、10日間は生産者を巡り、パンを一つも無駄にしない。
しかし決してロハスな生活ではなく、ビジネス的視点をもちながらパンをつくり、おいしさをお客さまに運ぶ。

パンづくりに対する想い、自分らしくいきいきと、彼女が選んだ働き方や生き方。

HIYORI BROT – 旅するパン屋

 

*1:パン職人、旅するパン屋「ヒヨリブロート」代表。リクルートでの広告営業、雑誌編集を経て、2008年に世田谷シニフィアン シニフィエ志賀勝栄氏の元へ弟子入り。ドイツでの修行を経て、2016年に兵庫県丹波市の山奥に「ヒヨリブロート」立ち上げ。
パンを一つも無駄にしない方法として、受注生産の通販を開始。焼けたパンを高速冷凍し、鮮度を保ったまま注文のある全国の消費者に届けている。月の暦に合わせて20日間パンを焼き、10日間は、生産者のもとへ旅する生活を続けている。

#齊藤孝浩「ユニクロ対ZARA」

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ユニクロZARA」齊藤孝浩 著(日本経済新聞出版社

渋谷の井の頭通にzaraの店舗があります。あたりの雰囲気がドンキホーテの店内のように満艦飾の色や形で敷き詰められている場所で、zaraのショウウインドウのデザインは特異です。例えていうなら中庭の緑のように適度な間合いがあって気持ちがいいのです。商品そのものの質感というより、商品が置かれた空間や環境と合わせて売り出すという店側の企てがわかるような気がします。

ユニクロの商品も同じような狙いが込められていますが、どこか方向性が違うなあと思っていました。その謎がようやくわかった気がします。む