「福岡市を経営する」高島宗一郎 著(ダイヤモンド社)
いつも世界を変えるのは若い人が持つ情熱と行動力です。
政治家を目指す若者がアナウンサーをへて地方自治体の首長となった自伝です。
現職に挑む新人議員という構造ですので、読む側は自然と主人公に寄り添いながら地方自治の世界を代理体験することになります。
相手は若造だと言ってなめてかかる年輩議員や市職員。官僚制度の悪い側面を肌で感じさせられます。
しかし大切なのは地方自治を担う人たちの視線の行先です。著者は地域の住民をイメージしながらその仕組みの変革に挑みます。
テクノロジーが世界を大きく変えていくこれからの世の中。何もやらないことが最善の地方自治である時代は早晩行き詰まります。
道路陥没事故を奇跡的に復旧した話や博多名物屋台の存続問題など、マスコミが報じない当事者目線の逸話が満載です。
このあたりのスピード感覚は落合陽一氏が共感する、実行力を感じます。
政治の世界は格闘技であることを改めて感じる内容です。
注意して読み進めたいのは、著者が政党に所属する政治家であること。
地元選出の麻生氏をことさら「麻生先生」と特別扱いしたり、安倍首相に褒められた点を引き合いに出したりするところには、親分子分の関係から抜け出しきれない"昭和な政治家"の匂いを感じます。
麻生は麻生と客観的に呼び捨てた方が響いたんではないかな。