ドキュメンタリーの制作者は例外なく取材対象となる相手との距離の取り方に悩むといいます。
過酷な人生を歩んだ人に寄り添って、その人の目線に立つて取材を続ける制作者ほど、「自分の立ち位置」に戸惑います。自分の居る場所は「安全」な場所だからです。
取材を続けるうちに「安全」な自分が、実は取材対象を救うことができない無力な存在であると気付きます。無力であることを里利、取材対象の抱える問題に積極的に関わっていこうと視点が定まった瞬間に見えてくるものがあります。
見えてきたものとは何か。障がい者を扱った本書の最大のテーマは取材者が共通に持つ「覚悟」なのかもしれません。